
記事公開:2026.08.31
出産を控えた働く女性にとって、産休に入るタイミングをどうするかはとても悩むもの。産休は法律によって定められた権利ですが、開始時期や取得条件を正しく理解している方は意外と少ないかもしれません。
この記事では、産前・産後休業の取得期間や数え方、育休との違い、申請のタイミングや給付金の基本まで、働くママが知っておきたい情報をわかりやすく解説します。安心して出産を迎えるために、ぜひ参考にしてください。

監修者のご紹介
菊地加奈子さん
(特定社会保険労務士)
出産を経験した先輩ママたちは、実際にどのタイミングで産休を取得したのでしょうか。また、取得にあたって悩んだことについて、未就学児のお子さまを持つクラブエリエール会員の先輩ママにアンケートを実施しました。
※コメントは一部抜粋しています。
【調査概要】
調査対象:未就学のお子さまがいるクラブエリエール会員の20~70代女性
調査期間:2026年6月3日~6月14日
調査手法:インターネットを利用したアンケート調査
有効回答数:421件
■産休・育休を取得しましたか?
産休・育休を取得したかどうかを伺うと、75.3%のママが「産休・育休ともに取得した」と回答しました。次いで「どちらも取得していない」が22.6%、「産休のみ取得した」が2.1%で、産休・育休をセットで取得したママが全体の7割を超える結果となっています。
■産休はいつから取得しましたか?
産休を取得した方に、いつから取得したかを尋ねると、「出産予定日の6週間前より早く取得した」が46.9%と最も多く、「出産予定日の6週間前から」の39.0%と合わせると、85.9%のママが出産予定日の6週間前までには産休に入っていることがわかりました。
一方「予定日近くまで働いた」というママは5.2%にとどまり、多くのママが余裕を持って産休を取得していることが読み取れます。
さらに、「その他」を選択した方にも具体的な期間を聞いてみると、会社規定や体調などの理由により出産予定日の6週間前より早く産休に入る方と、出産予定日まで6週間を切っているものの、余裕をもったタイミングで産休に入る方に分かれました。
<産休の取得時期(自由記述)>
・双子だったので14週間前から取得した
・産休前より先に入院しており、そのまま産休に突入した
・会社の規定で8週間前から取得した
・予定日の2週間前
・予定日の1ヵ月前頃
■産休前に不安に思ったことはなんですか?
最後に、産休前に不安に思ったことについて伺ったところ、最も多かったのは「復帰後の働き方」が182人で、次に「収入や給付金」が173人とほぼ同数でした。
また、「仕事の引き継ぎ」は124人、「いつから休むべきか」「職場への伝え方」は84人と続き、産休による職場への影響に不安を抱えている方が多いことが読み取れます。
さらに「その他」と答えた方にも、産休前に不安に思ったことを改めて聞いたところ、以下のような回答がありました。
<産休前に不安に思ったこと(自由記述)>
・職場の人との関わり方
・育児ができるかどうか、出産後の生活が不安だった
・出産時の、上の子の預け先やフォロー
・体調も不安定だったので、さらにおなかも大きくなったら産休前まで働けるか不安だった
・保育園に入園できるかどうか
産休前は職場復帰や育児への不安があるのはもちろんですが、制度や手続きへの疑問を抱えているママが多いことがわかります。取得のタイミングや状況は人それぞれですが、まずは産休の基本的な制度を正しく知っておきましょう。
産休(産前産後休業)とは、出産前後の一定期間に、働く女性が仕事を失うことなく安心して出産に臨み、体を回復させるために設けられた制度です。労働基準法第65条によって定められており、産前休業は本人の請求によって取得でき、産後休業は申し出の有無にかかわらず就労が禁止されています。いずれも、勤務している会社の就業規則に制度の記載がなくても取得が可能です。
「産前休業」と「産後休業」では、それぞれ取得できる期間が異なります。
産前休業は、出産予定日の6週間前(双子など多胎妊娠の場合は14週間前)から、本人が希望することで取得可能です。会社の就業規則によっては、6週間よりも前に産前休業を取得できるケースもあります。そのため、勤めている会社に確認するのが確実です。
産前休業は、定められた期間内であれば、実際に休みに入るタイミングを自分で決めることができます。申請期限は特に定められていませんが、余裕を持って会社へ申し出るのが一般的です。
産後休業は、出産の翌日から8週間取得可能です。この期間は母体の回復を優先するため、申し出の有無にかかわらず就労が禁止されています。また、産後休業は出産後に自動的に適用されるため、別途申請は必要ありません。ただし、産後6週間を経過した後、本人が希望し、医師が支障ないと認めた場合に限り、就業が可能となるケースもあります。
■産前・産後休業の取得可能期間
産前休業は出産予定日を基準に開始時期が決まりますが、出産が予定日より遅れた場合は、その分だけ産前休業の期間が長くなります。一方で、出産が予定日より早まった場合は、その時点から産後休業に切り替わるため、産前休業の期間は短くなります。
対して産後休業は「出産日の翌日から8週間」と決まっているため、出産日が前後しても期間が変わることはありません。出産は予定日通りにいかないことも多いため、制度の仕組みを知っておくと安心です。
育休(育児休業)は、子どもを育てるために一定期間仕事を休むことができる休業制度です。育児・介護休業法によって定められており、労働基準法で定められた産休とは根拠となる法律が異なります。
産休が「出産をする女性のための制度」であるのに対し、育休は「育児をするママ・パパのための制度」です。産休は女性のみが対象となりますが、育休は男性も取得できる点が大きな違いとなります。
※勤続1年未満の方や、週の所定労働日数が2日以下の方は、会社の労使協定により育休の対象外となっている場合があります。お勤め先の就業規則をご確認ください。
育児休業には、状況に応じて利用できるいくつかの制度があります。
■育休の種類
| 種類 | 内容 | 取得できる期間 |
|---|---|---|
| 育児休業(通常) | 子どもを養育するための基本的な休業制度 | 出産日(女性は産後休業終了後)から原則1歳まで(最長2歳まで延長可) |
| 産後パパ育休(出生時育児休業) | 出生直後から取得できる育休制度(主に男性向け) ※労使協定の合意があれば一定の条件下で就業可能 |
出生後8週間以内に最大4週間を限度として2回まで分けて取得可能 |
| パパ・ママ育休プラス | 両親ともに育休を取得する場合に延長できる制度 | 育児休業(通常)と組み合わせて最長1歳2か月まで |
企業によっては独自の制度やルールがある場合もあります。育休の取得を検討している方は、勤務先の就業規則を確認しておきましょう。
また、育児休業(通常)の申請は、会社に対して休業開始予定日の1ヵ月前までに申請しなければなりません。産後パパ育休の場合は、休業開始予定日の2週間前まで(労使協定を締結している場合は最大1ヵ月前まで)に申請すれば取得が可能です。
産休・育休中の収入を不安に思う方は少なくありません。そこで、産休・育休期間中は、給与の代わりに給付金が支給される制度があります。制度を正しく理解しておくことで、安心して休業に備えることができるでしょう。
■主な給付金の種類
| 種類 | 支給元 | 支給期間 | 支給額の目安 |
|---|---|---|---|
| 出産手当金 | 健康保険 | 産前休業開始日〜産後休業終了日 | 標準報酬日額の3分の2 |
| 育児休業給付金 | 雇用保険 | 育休開始から原則1歳まで(特別な理由がある場合に限り、最長2歳まで延長可) | 育休開始180日:賃金の約67% それ以降:賃金の約50% ※それぞれに上限額があり、毎年8月に改定。最新の上限額は厚生労働省のリーフレット「育児休業給付の内容と支給申請手続」でご確認ください |
これらの給付金は、一定の条件を満たしたうえで申請が必要です。いずれも医師の証明や会社の記入が必要になるケースが多いため、事前に流れを確認しておくと安心です。
また、産前産後休業の期間中は、会社が手続きを行うことで健康保険料・厚生年金保険料が本人・会社負担分ともに免除されます。なお、給与が支払われない期間は雇用保険料も発生しません。免除期間中も保険の保障はそのまま受けることができます。
2025年4月からは、新たに2つの給付制度が始まりました。ひとつは「出生後休業支援給付金」で、子の出生後の一定期間に夫婦ともに育休を取得するなどの要件を満たすと、最大28日分について給付率が実質80%(67%+13%)に引き上げられます。
もうひとつは「育児時短就業給付金」で、2歳未満の子を養育するために時短勤務をして賃金が下がった場合に、時短中の賃金の最大10%が支給される制度です。賃金額により支給率が変わります。
産休・育休後に育児と仕事の両立がうまくできるかどうか、不安に思うママ・パパは少なくありません。こうした両立を支えるために、法律によってさまざまな制度が用意されています。
■復帰後の働き方を支える制度
| 種類 | 内容 | 対象期間 |
|---|---|---|
| 短時間勤務制度 | 勤務時間を短縮して働ける制度 | 原則、子どもが3歳になるまで |
| 子の看護等休暇 | 子どもの体調不良や通院時、学級閉鎖、入園(学)式、卒園式などに取得できる休暇 | 小学校3年生修了まで |
| 所定外労働の制限 | 残業を免除される制度 | 小学校就学前まで |
| 時間外労働の制限 | 残業時間に上限を設けられる | 小学校就学前まで |
| 柔軟な働き方を実現するための措置 | 在宅勤務や時差出勤など、働き方を柔軟に調整できる制度を企業が選択して導入
<選択して講ずべき措置> |
3歳から小学校就学の始期に達するまで |
企業は育児と仕事の両立を支援するため、テレワークや時差出勤などの柔軟な働き方を含む複数の制度の中から、一定数を選択して導入することが求められています。復帰前に自社の制度を確認しておきましょう。
監修者のご紹介
菊地加奈子さん(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人ワーク・イノベーション代表。企業の両立支援、多様な働き方の導入支援、女性活躍推進に注力し、全国でセミナー講演登壇を行っている。また、自身も保育園の経営を行っている経験を活かし、社会保険労務士として全国800超の保育園の労務管理にも従事。こども家庭庁こども誰でも通園制度(仮称)の本格実施を見据えた事業実施の在り方に関する検討会委員などを歴任。プライベートでは大学生から小学生まで、1男5女の母。
社会保険労務士法人ワーク・イノベーション
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産休は、ママが安心して出産に臨み、体と心をしっかり回復させるための大切な権利です。「いつから休めるのか」「手続きはどうすればいいのか」が事前にわかるだけで、出産への不安はずいぶん軽くなるものです。
制度の内容で気になることがあれば、早めに職場に確認しておきましょう。制度を味方につけて、産前・産後の時間を自分らしく、穏やかに過ごしてくださいね。
産休には、産前休業と産後休業の2つがあり、産前休業は出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から取得できます。産後休業は出産翌日から8週間です。産前休業は本人が希望した場合に取得できる制度のため、申請が必要です。
産休は、雇用形態にかかわらず取得できます。産休は労働基準法で定められた制度であり、すべての働く女性が対象です。
産休中は原則として給与の支払いはありませんが、健康保険から「出産手当金」が支給されます。出産手当金は、産前・産後休業期間中、標準報酬日額の3分の2が支給される制度です。なお、産前産後休業の期間中は、健康保険料・厚生年金保険料が本人・会社負担分ともに免除されます。給与が支払われない期間は雇用保険料も発生しません。免除期間中も保険の保障はそのまま受けることができます。
画像提供/PIXTA


