
記事公開:2026.7.24
ワンちゃんの熱中症は、短時間で命に関わるおそれがある、深刻な疾患です。人間は全身の汗腺から汗をかいて体温を下げられますが、ワンちゃんは汗をかける場所は足裏などに限られていて、体温調節を主に口からの呼吸(パンティング)に頼っているため、高温多湿の環境ではすぐに限界を迎えてしまいます。そのため、オーナーさんによる熱中症対策が欠かせません。
この記事では、ワンちゃんの熱中症のサインや原因、予防法のほか、応急処置、室内外での対策をわかりやすく解説します。
監修者のご紹介
松田 唯さん
埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。 2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)を開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬についてわかりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解してオーナーさんが選択できる診療を心掛けるようにしている。
ガイア動物病院
ワンちゃんの熱中症は進行がとても速く、「少し元気がないな」「しんどいのかな…?」とオーナーさんが思っているうちにあっという間に重症化することもあります。ワンちゃんの小さな異変を「サイン」として早期に察知することが、命を守る第一歩です。ここではワンちゃんが示す熱中症のサインを解説します。
■ワンちゃんの熱中症サイン
いつもよりワンちゃんの呼吸が速く、舌を長く出して「はぁはぁ」と苦しそうに呼吸している状態(パンティング)は、体温調節が限界に近づいているサインです。
また、滝のようなよだれが出たり、舌や口の中の粘膜が「レンガ色」のような濃い赤色に変わっていたりする場合は、すでに体内で熱がこもっていると考えられます。通常の「暑がっているだけ」の状態と区別するためにも、粘膜の色を定期的に確認する習慣をつけておくとよいでしょう。
ワンちゃんの白目が赤く充血し、目がうつろで焦点が合わない場合も熱中症のサインです。そのほか、呼びかけへの反応が明らかに鈍い、足元がふらつく、横になったまま起き上がろうとしない、といった状態が続くときは、脳や筋肉がダメージを受けている可能性があります。すぐに涼しい場所に移動して応急処置を行ってください。
ワンちゃんが下痢で血が混じっている場合や血尿、または繰り返す嘔吐は、高熱によって内臓や血管が深刻なダメージを受けているサインです。熱中症が進行すると、体内では消化管の粘膜が破壊されて出血が起こるほか、進行すると体内で血が止まらなくなる「凝固系の異常」を引き起こし、極めて危険な状態に陥ります。
こうした症状が見られた場合は危険な状態と判断し、すみやかに動物病院へ搬送してください。搬送前に排泄物の色や量をスマートフォンで撮影しておくと、診察がスムーズになります。
ワンちゃんの熱中症は、7〜9月の真夏だけでなく、4〜6月の暑さに体がまだ慣れていない時期にも起こりやすいのが特徴です。特に、雨上がりの高温多湿な日は、アスファルトから発生する蒸気と熱気が強いので注意してください。ここでは、ワンちゃんが熱中症になる原因を解説します。
<ワンちゃんが熱中症になる原因>
・身体の構造として汗をかけない
・地面に近い場所で地面からの熱を受けやすい
・閉ざされた空間から逃げられない状況になっている
・犬種や年齢によって体温調節が苦手な場合がある
ワンちゃんには人間のような汗腺が足裏など一部にしかなく、主にパンティング(口からの荒い呼吸)で体温を下げています。高温多湿の環境では、この排熱機能があっという間に限界を迎えてしまいます。
室内では、室温だけでなく湿度を意識的に下げることで、パンティングによる排熱をスムーズにする環境を整えることが大切です。
アスファルトの照り返し(ふく射熱)は、地面に近いほど高温になります。人間が「暑い」と感じているとき、ワンちゃんの身体の高さではさらに5〜10℃以上高い熱気にさらされていることもあります。
暑い時期は散歩の時間帯の変更と併せて、地面の熱を直接受けない工夫も取り入れましょう。手のひらを地面に7秒ほど当てて確認し、熱いと感じたらその時間帯の散歩は控えてください。
ワンちゃんが閉ざされた高温の空間から逃げられない状況になっていると、自力で涼しい場所へ移動できず、短時間で熱中症が重症化してしまう可能性があります。
暑くなる可能性のある場所に、ワンちゃんを置き去りにすることは厳禁です。例えば車内やケージ、サンルームといった場所は、外気よりも早く温度が上昇します。おうちで留守番している際も、オーナーさん不在の間は、落雷による停電やタイマーによるエアコン停止にも注意が必要です。お風呂場やサンルームは閉じ込め事故が起きやすいので、留守中は扉を施錠するなどの対策を徹底してください。
犬種やワンちゃんの年齢によっては、体温調節が苦手な場合があります。熱中症のリスクが高いといわれるワンちゃんのタイプと犬種・特徴は次のとおりです。
熱中症のリスクが高いといわれる犬種や特徴
| タイプ | 主な犬種・特徴 |
|---|---|
| 短頭種 | パグ、フレンチブルドッグ、シーズーなど。鼻腔が狭く排熱効率が低い |
| 北方出身の犬種 | シベリアンハスキー、サモエドなど。厚い被毛で体熱がこもりやすい |
| 大型犬 | ゴールデンレトリバーなど。体積に対して放熱面積が少ない |
| 肥満・持病のあるワンちゃん | 心臓疾患・呼吸器疾患があると熱を逃がす機能が低下。甲状腺機能低下症・糖尿病、クッシング症候群などの内分泌疾患がある場合もリスクが高まりやすい |
| 毛色が黒いワンちゃん | 直射日光のエネルギーを吸収しやすく体感温度が上昇しやすい |
ワンちゃんの熱中症は、初期は荒い呼吸(パンティング)や目の充血から始まり、進行すると嘔吐・下痢、足元のふらつきが生じ、最終的には意識を失います。「暑い環境」や「運動直後」にこれらの症状が出ている場合は、次の手順で応急処置を行ってください。
<応急処置の手順>
1.涼しい冷房下などの場所に移動させる
2.水で濡らしたタオル(ぬるめが理想)で全身を覆い、扇風機で風を送る
3.太い血管が通る「首・脇・太ももの付け根」を重点的に冷やす
4.意識がはっきりしている場合のみ少量の水を与える(意識が混濁している場合は誤嚥を防ぐため無理に飲ませない)
応急処置を行いながら、同時に動物病院への連絡・搬送の準備を進めましょう。体を冷やしながらワンちゃんを運ぶことが大切です。
熱中症の疑いがあるワンちゃんのうち、下記のいずれかが見られた場合は、様子見せず、迅速な受診が必要です。すぐに動物病院へ連絡して搬送してください。
<熱中症の疑いがあるワンちゃんを直ちに救急搬送すべき緊急サイン>
・ぐったりして自力で立てない(虚脱)
・けいれんを起こしている
・嘔吐が続いている、または血便・血尿がある
・歯茎や舌の色が紫色・白っぽいなど異常がある
動物病院を受診する際、以下の項目を伝えると迅速な治療の参考になります。
<動物病院に連絡する際に伝えることチェックリスト>
・いつから?
・耳の穴に指を入れたときに体温を熱く感じるか?
・意識はあるか?
・どんな応急処置をしたか?
動物病院では、体温を下げる処置と同時に、ダメージを受けた臓器の機能をサポートする医療処置が行われます。重症の場合は入院が必要になることもあります。
<ワンちゃんの熱中症の主な治療内容>
・重度の脱水を改善するための静脈点滴
・点滴や酸素吸入を併用し、深部体温を下げる処置
・肝臓・腎臓などの内臓のダメージ、凝固系の異常を調べる検査と対応
・脳浮腫(のうふしゅ)を抑えるための薬剤、胃腸粘膜を保護する薬剤の投与
ワンちゃんの熱中症のリスクを最小限に抑えるには、日頃の環境管理が欠かせません。ワンちゃんにとって安全な室内環境を整えるポイントを紹介します。
<自宅でワンちゃんを熱中症にさせない予防法>
・室内温度25℃前後、湿度60%以下に保つ
・カーテンなどで直射日光を遮断する
・給水ポイントを複数箇所に設置する
・トリミングとブラッシングで被毛を管理する
ワンちゃんにとって快適な環境は、人間より少し涼しめです。室温の目安は23〜26℃で、短頭種や高齢犬は23℃に近い設定が推奨されます。また適切な湿度は40〜60%です。エアコンと除湿機を併用して温度と湿度の両方をコントロールしてください。
エアコンの設定温度だけでなく、ワンちゃんが過ごす床付近に温湿度計を置き、実際の数値で管理することが大切です。
室温が適切でも、空気が停滞しているとワンちゃんの周囲に熱がこもります。サーキュレーターで冷気を循環させ、床付近に冷たい空気が溜まりすぎないようにしましょう。ただし、風をワンちゃんに直接当て続けないように注意してください。
また、遮光カーテンやすだれを活用して窓際からのふく射熱を物理的に遮断することも有効です。太陽の動きに合わせて、ワンちゃんのケージやベッドを一日中「日陰になる場所」に置くようにしましょう。
いつでもワンちゃんが新鮮な水を飲めるよう、給水ポイントを複数箇所に設置しましょう。水切れは熱中症の直接的な原因になるため、特に留守番中は水が切れないようにすることが大切です。
リビングと寝室など、最低2箇所以上に水飲み場を設置してください。水がぬるくなる前にこまめに入れ替え、夏場は氷を入れるのもおすすめです。また、ワンちゃん用の経口補水液やスポーツドリンクも、効率的な水分補給に活用できます。
なお、「冷たすぎる水」は胃の血管が収縮して逆効果になる場合があるので、常温からひんやり程度が適切です。
日常的なブラッシングでアンダーコート(下毛)を丁寧に取り除くと、皮膚付近の通気性が上がり、体温がこもりにくくなります。
トリミングする際は、犬種と皮膚の状態に合わせて毛の長さを決めましょう。短く剃りすぎると直射日光が皮膚に届くため、体温上昇・日焼け・虫刺されのリスクが高まります。
暑い時期の外出時は、室内よりも熱中症のリスクが高まります。特に夏の散歩や車での移動時には、次のポイントに気をつけましょう。
アスファルトのふく射熱でワンちゃんの足裏がやけどしやすく、体温上昇にもつながります。下記のポイントを意識して、散歩の計画を立てましょう。
<暑い時期のワンちゃんの散歩のポイント>
・散歩は早朝か日没後1〜2時間以降の夜間の涼しい時間帯に行う
・出発前に手のひらを路面に7秒ほど当てて熱さを確認する(熱く感じたら散歩を控える)
・日陰コースを選び、持ち歩き用の水を必ず携帯する
・昼間の長距離散歩を避け、散歩を短く複数回に分割する
ワンちゃんと自動車で出掛ける際は、熱中症リスクへの配慮が欠かせません。停車中の車内は冷房がなければ急速に温度が上昇し、外気温が25℃でも車内は1時間で50℃近くになることがあります。エンジンをかけたままの駐車は事故・盗難のリスクもあるため、ワンちゃんを車内に置き去りにしないことが基本です。自動車での移動時の注意ポイントは下記のとおりです。
<ワンちゃんの自動車での移動時の注意ポイント>
・移動中は冷房を効かせ、キャリーの通気と日陰を確保する
・長距離移動の際はこまめに休憩し、水分補給をする
・「ちょっとだけ」でもワンちゃんを車内に置き去りにせず、必ずいっしょに車外に出る
暑い季節の熱中症予防には、お散歩の時間帯への配慮はもちろん、帰宅後の「素早いクールダウン」と「体調管理」が欠かせません。「キミおもい」の「肌にやさしいウエットティシュー」は、デリケートなワンちゃんの肌をいたわりながら、汚れをさっぱりと拭き取ることができます。
また、熱中症対策として水分を多くとるこの時期は、おしっこの量が増えたり、室内で過ごす時間が長くなったりし、排泄物のニオイがこもりやすくなりがちです。「キミおもい」のワンちゃんシリーズのトイレシートやおむつは、優れた吸収力と防臭設計のアイテムで、夏の室内環境を清潔・快適に保ちます。愛犬のすこやかな毎日のために、ぜひ取り入れてみてください。
「キミおもい」のワンちゃんシリーズについては、下記のページをご覧ください。
キミおもい Dog– ワンちゃん-
ワンちゃんは人間よりも体温調節が苦手なため、熱中症は「なる前に防ぐ」ことが何よりも大切です。ワンちゃんは熱中症になると、はあはあと荒い呼吸をしたり、ぐったりとしたりするほか、血便・嘔吐などの異変が見られます。短頭種や高齢犬など、熱中症のリスクの高いワンちゃんには特に注意し、室温23〜26℃・湿度40〜60%の環境を整え、給水ポイントも複数確保してあげてください。
大切な家族であるワンちゃんが、暑い季節も健康に過ごせるように、日々の細やかな配慮と快適な環境づくりを進めていきましょう。
画像提供/PIXTA
ワンちゃんが熱中症になると、いつもより荒い呼吸(パンティング)や目の充血、嘔吐・血便・血尿などの症状が現れます。さらに、ぐったりして自力で動けなかったり、呼びかけに反応しなかったりなど、「いつもと違う」と感じたら、涼しい場所に移動させてください。ワンちゃんの熱中症の進行は速いため、一刻も早い救急搬送が必要です。
ワンちゃんが熱中症になったら、まずは涼しい場所に移動し、濡れタオルで全身を覆い扇風機で風を送ってあげてください。首や脇、太ももの付け根を重点的に冷やし、意識がはっきりしているときだけ少量の水を与えます。冷やす際に冷水を使うと血管が収縮して逆効果になることがあるため、水はぬるめが理想です。応急処置をしながら、同時に動物病院に連絡して搬送の準備を進めましょう。
室内では温度23〜26℃、湿度40〜60%を保ち、カーテンなどで直射日光を遮断し、給水ポイントを複数箇所に設置することが大切です。散歩は早朝か夜の涼しい時間帯に行い、オーナーさんが手のひらで路面を触ってみて熱い場合は散歩を控えましょう。車での移動時は、たとえ短時間でも車内にワンちゃんを一人で残さないことが鉄則です。特に短頭種、高齢犬、肥満のワンちゃんは特に熱中症になるリスクが高いため、よりいっそう配慮してあげてください。












