記事公開:2024.04.30
ネコちゃんのオーナーさんの中には、「ネコちゃんのおしっこの色が赤い?」とびっくりした経験がある人もいるでしょう。ネコちゃんは元々泌尿器系のトラブルが起きやすいため、血尿が出て動物病院にかかるケースが少なくありません。
この記事では、ネコちゃんの血尿の原因や緊急性の高いケース、自宅での採尿方法、おしっこトラブルの予防法についてご紹介します。ネコちゃんの健康維持のために、ぜひお役立てください。
ネコちゃんのおしっこの色は、そのときのコンディションによって多少差はあるものの、通常はやや薄い黄色をしています。それに対して「血尿」とは、文字どおり血の混じったおしっこが出る状態のこと。おしっこに血のかたまりが少し混じっているだけのこともあれば、おしっこ全体がオレンジ色やピンク色、真っ赤に染まって見えることもあります。排尿後の時間経過や出血量などによって、おしっこの色が変わるため注意が必要です。
一口に血尿といっても、原因や症状の程度はさまざまです。場合によっては命に関わる病気が隠れていることもあるため、どのようなケースでも、気づいたら早めに動物病院を受診することをおすすめします。
ネコちゃんの血尿の原因として多いのは、泌尿器(腎臓、尿管、膀胱、尿道)のどこかで出血が起きていることです。下記で詳しく説明していきます。
膀胱炎や尿道炎は、ネコちゃんの泌尿器系の病気でも特に多いもので、膀胱あるいは尿道の中で炎症が起きる病気です。
膀胱炎は、さまざまな原因によって膀胱に炎症が起こる病気です。細菌感染が原因となる場合もあれば、結晶や結石など物理的な刺激が原因となる場合もあります。検査をしてもはっきりとした原因がわからない膀胱炎の場合、治療は対症療法や生活環境の改善が中心となるケースがあります。
膀胱炎で見られる血尿以外の症状として挙げられるのは、「頻繁にトイレに行くのにおしっこが少ししか出ない」「おしっこをするときに痛そうに鳴く」「トイレ以外の場所で排尿してしまう」「陰部を気にしてなめる」などです。
尿道炎は、主に細菌の感染や結石が原因となって尿道に炎症が起こる病気です。尿道炎は血尿のほか、炎症による痛みから「おしっこの姿勢が不自然な状態になる」「おしっこをするときに痛そうに鳴く」といった症状が見られます。
尿石症は、尿路(腎臓や尿管、膀胱、尿道)のどこかに結晶や結石が生じる病気です。マグネシウムなどのミネラルを過剰に摂取したり、食事や細菌感染の影響で尿のpHバランスが崩れたりすることによって引き起こされます。ネコちゃんのおしっこがキラキラと光って見える場合、結晶や砂状の結石が含まれている可能性が考えられるでしょう。
結晶や結石が排泄の際に膀胱や尿道を移動し、粘膜を傷つけてしまうと血尿につながります。結晶や結石が体内に堆積して完全に尿路をふさいでしまうと、おしっこが出なくなってしまう尿管閉塞や尿道閉塞になってしまうため、早急な治療が必要です。なお、尿道閉塞は男の子に起こりやすく、尿石症のほか膀胱炎などでも起こるケースがあります。いずれの場合もおしっこが出ない状態は緊急を要するため、すぐに動物病院を受診してください。
上記の2例に比べると数は少ないですが、尿路の腫瘍によって血尿が発生することもあります。
腫瘍が大きくなることで、正常な組織を圧迫したり傷つけたりして出血するほか、腫瘍自体が壊れて出血する場合もあります。腫瘍は特に、中高齢のネコちゃんに多く見られる病気です。
男の子の場合、何らかの原因でペニスに違和感を覚えてなめすぎてしまうことがあります。ネコちゃんの舌はとげのように突起があるため、何度もなめるとペニスが傷ついてしまい、出血して血尿となります。この場合は、ペニスをなめる原因になっている症状への対応が必要です。
避妊手術をしていない女の子は、膣や子宮、卵巣などの生殖器系の疾患や炎症により出血することがあります。生殖器系の疾患の中で比較的多く見られるのは、子宮蓄膿症による血尿です。
ネコちゃんが血尿をする場合、泌尿器系を中心とした病気が隠れている可能性があります。たとえネコちゃんが元気で食欲があり、血尿の程度が軽く見えたとしても、できるだけ早く動物病院を受診することをおすすめします。
受診する際、自宅でおしっこが採れる場合は、できるだけ排尿直後のおしっこを持っていくといいでしょう。また、「血尿がいつから始まったのか」「1日何回トイレに行くのか」「そのうち血尿をしているのは何回か」「排尿姿勢をとってから排尿するまでの様子(時間がかかっていないか、痛がっていないか)」などを確認しておくと、診察の際に役立ちます。
なお、ネコちゃんに次のような症状も見られる場合は、すでに病状が進んでいる可能性があります。早急に動物病院を受診するようにしてください。
<早急に動物病院を受診したほうがいいケース>
・食欲がない
・元気がない
・嘔吐がある
・トイレに行く頻度が高いが、おしっこがほとんど出ていない
・出血量が多い(ほとんど血液に見えるような尿が出る)
前述のとおり、ネコちゃんの血尿で動物病院を受診する際は、できるだけ排尿直後のおしっこを持っていくのがおすすめです。ここからは、ご自宅でできる採尿方法をご紹介します。
おしっこを採る方法はいくつかありますが、なるべくネコちゃんに負担をかけず、失敗しにくいやり方を選ぶことがポイントです。
固まるタイプの猫砂を使用している場合、おしっこが固形になってしまうため採尿は困難です。一方で、システムトイレで固まらないタイプの猫砂を使っている場合は、ペットシーツを敷かずにネコちゃんにおしっこをしてもらうことで、下段のトレーに溜まったおしっこを簡単に採尿できます。
トイレの猫砂の上に、ビニールシートや裏返したペットシーツを敷いておくことで、排尿後上に溜まったおしっこを採ることができます。おしっこに猫砂が付くと正確な検査が難しくなる可能性があるため、ビニールシートなどの位置を調整しましょう。猫砂のない状態で、ビニールシートや裏返したペットシーツにおしっこをしてもらう方法もあります。
ただし、神経質なネコちゃんの場合、トイレの感触に違和感を覚えておしっこをしなかったり、シートを引っ掻いて破いてしまったりするかもしれません。その場合は、無理にこの方法で行うのではなく、ほかの方法も検討しましょう。
ネコちゃんがおしっこをしようとするタイミングで、お玉やトレーを背後からおしりの下に入れて、直接採る方法もあります。差し入れるタイミングが早すぎると、ネコちゃんが排尿をやめてしまう可能性があるため、おしっこを始めてから、驚かせないようにそっと行いましょう。
ペットの採尿専用グッズ使う方法もあります。代表的なのはウロ・キャッチャーというもので、動物病院やネット通販などで購入できます。棒の先端にスポンジがついており、ネコちゃんがおしっこを始めたら、お玉やトレーで採る方法と同じく、おしりの下にそっと差し入れてください。スポンジ部分をおしっこで十分ぬらすようにすればOKです。
上記で紹介したほかにも、トイレの猫砂の量をできるだけ少なくしておき、トイレの端に溜まった尿を採るという方法もあります。
ネコちゃんのおしっこが採れたら、すぐに密封できる容器(蓋付きの小さな瓶や密閉バッグなど)に入れ、できるだけ早く動物病院へ持って行ってください。時間が経過すると菌が繁殖したり、おしっこが酸化したりして、正しく検査できないことがあります。採ったおしっこで正しい検査ができない場合には、動物病院で改めておしっこを採り、再検査となる場合があります。
自宅での採尿が難しい場合は、動物病院で採ってもらいましょう。おしっこを持っていく代わりに、おしっこ後の猫砂やシートについたおしっこの写真を撮って、獣医師に見てもらうのもおすすめです。
ネコちゃんの血尿を引き起こす病気やトラブルを防ぐには、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。ここからは、ネコちゃんの血尿を予防するためにおうちでできることをご紹介します。
ネコちゃんは水を飲む量が少なくなると、おしっこが濃縮しやすく、それによって泌尿器系に良くない影響を与えることがあります。
あまり積極的に水を飲まないネコちゃんの場合は、水飲み場の数を増やす、フードに水分を加える、フードをドライタイプからウェットタイプに切り替えるなどの対策をとりましょう。
キレイ好きなネコちゃんは、トイレが清潔でないと排泄自体を我慢してしまい、その結果、泌尿器系に負担をかけてしまうことがあります。
トイレはこまめにお掃除をして清潔に保ち、多頭飼いの場合はネコちゃんの頭数以上のトイレを用意するようにしましょう。
ネコちゃんのおしっこは、体調をチェックするバロメーターでもあります。普段から、おしっこの回数や頻度、量、色などを観察して、小さな変化にも気づけるようにしておきましょう。
オーナーさんの家族構成の変化や、お部屋の模様替え、ペットホテルに預けられたことなどで、精神的なストレスがかかる場合があります。
できる限り環境の変化を避けつつ、やむをえない場合は、それによってネコちゃんの行動に変化がないか、注意深く観察するようにしましょう。
ネコちゃんに血尿が見られるケースは決して珍しくはありませんが、「よくあること」と放置せず「色が赤っぽい」「普段と違う」と感じたときは異変のサインと考え、すぐに動物病院で診察してもらいましょう。
ネコちゃんの健康維持のため、日頃のトイレ掃除の際に、おしっこをチェックする習慣をつけておくことをおすすめします。
大王製紙の「キミおもい」のネコちゃんシリーズは、ネコちゃんといっしょの暮らしがもっと幸せになることを目指すペット用品ブランドです。
ノーマルトイレ用の固まる猫砂は「紙」と「鉱物」の2タイプから選べます。紙の猫砂はおしっこのpHによって色が変わる黄色い砂と、おしっこの色がわかりやすい白い砂を使用。鉱物の猫砂は白色の砂が混ざっており、砂粒が細かいのが特長です。さらに、システムトイレ用のシートも、白色でおしっこの色がわかりやすいため、毎日の健康チェックに役立ちます。各社システムトイレに使用可能です。
また、トイレ環境を整えるために、お掃除の際には汚れもニオイも除去できる、トイレまわりの掃除用シートをぜひご活用ください。
「キミおもい」のネコちゃんシリーズについては、下記のページをご覧ください。
キミおもい Cat -ネコちゃん-
ネコちゃんに血尿が見られる原因として多いのは、泌尿器のどこかで出血が起きていることです。具体的には、膀胱炎や尿道炎、尿石症、尿路の腫瘍などによる出血があります。男の子の場合は、何らかの原因でペニスをなめすぎて傷つけてしまうケースも。一方、避妊手術をしていない女の子の場合は、生殖器系の疾患や炎症が原因となることもあります。
ネコちゃんのおしっこを採る方法はいくつかあります。システムトイレを使っている場合は、下段のトレーにペットシーツを敷かずに使用することで、簡単におしっこを採ることが可能です。ほかには、猫砂の上にビニールシートなどを敷く、排尿時にお玉やトレーで直接おしっこを受け止める、専用の採尿グッズを使うといった方法もあります。
ネコちゃんの血尿を予防するためには、できるだけストレスを与えないこと、ネコちゃんが飲む水の量を増やす工夫をすること、そしてトイレを清潔に保つことを心掛けましょう。また、普段から排泄の頻度や量などをよく観察して、ちょっとした変化に気づけるようにしておくことも大切です。
画像提供/PIXTA
監修者のご紹介
松田 唯さん
埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)を開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬についてわかりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解してオーナーさんが選択できる診療を心掛けるようにしている。
ガイア動物病院
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