
記事公開:2025.09.22
ネコちゃんのオーナーさんの中には、「ネコちゃんのおしっこの色が赤い?」とびっくりした経験がある人もいるでしょう。ネコちゃんは元々泌尿器系のトラブルが起きやすいため、血尿が出て動物病院にかかるケースが少なくありません。
この記事では、ネコちゃんの血尿の原因や年齢別・性別によるリスク、緊急性の高いケース、自宅での採尿方法、おしっこトラブルの予防法などを詳しくご紹介します。ネコちゃんの健康維持のために、ぜひお役立てください。
ネコちゃんのおしっこの色は、そのときのコンディションによって多少差はあるものの、通常はやや薄い黄色をしています。それに対して「血尿」とは、文字どおり血の混じったおしっこが出る状態のこと。おしっこに血のかたまりが少し混じっているだけのこともあれば、おしっこ全体がオレンジ色やピンク色、真っ赤に染まって見えることもあります。排尿後の時間経過や出血量などによって、おしっこの色が変わるため注意が必要です。
■ネコちゃんの正常なおしっこと血尿の見分け方
一口に血尿といっても、原因や症状の程度はさまざまです。場合によっては命に関わる病気が隠れていることもあるため、どのようなケースでも、気づいたら早めに動物病院を受診することをおすすめします。
ネコちゃんの血尿の原因として多いのは、泌尿器(腎臓、尿管、膀胱、尿道)のどこかで出血が起きていることです。下記で詳しく説明していきます。
膀胱炎や尿道炎は、ネコちゃんの泌尿器系の病気でも特に多いもので、膀胱あるいは尿道の中で炎症が起きる病気です。
膀胱炎は、さまざまな原因によって膀胱に炎症が起こる病気です。細菌感染が原因となる場合もあれば、結晶や結石など物理的な刺激が原因となる場合もあります。検査をしてもはっきりとした原因がわからない膀胱炎の場合、治療は対症療法や生活環境の改善が中心となるケースがあります。
膀胱炎で見られる血尿以外の症状として挙げられるのは、「頻繁にトイレに行くのにおしっこが少ししか出ない」「おしっこをするときに痛そうに鳴く」「トイレ以外の場所で排尿してしまう」「陰部を気にしてなめる」などです。
尿道炎は、主に細菌の感染や結石が原因となって尿道に炎症が起こる病気です。尿道炎は血尿のほか、炎症による痛みから「おしっこの姿勢が不自然な状態になる」「おしっこをするときに痛そうに鳴く」といった症状が見られます。
尿石症は、尿路(腎臓や尿管、膀胱、尿道)のどこかに結晶や結石が生じる病気です。マグネシウムなどのミネラルを過剰に摂取したり、食事や細菌感染の影響で尿のpHバランスが崩れたりすることによって引き起こされます。ネコちゃんのおしっこがキラキラと光って見える場合、結晶や砂状の結石が含まれている可能性が考えられるでしょう。
結晶や結石が排泄の際に膀胱や尿道を移動し、粘膜を傷つけてしまうと血尿につながります。結晶や結石が体内に堆積して完全に尿路をふさいでしまうと、おしっこが出なくなってしまう尿管閉塞や尿道閉塞になってしまうため、早急な治療が必要です。なお、尿道閉塞は男の子に起こりやすく、排尿姿勢をとるが尿が出ない状態は尿道閉塞が疑われます。同じ症状は、尿石症のほか膀胱炎などでも起こるケースがあります。いずれの場合もおしっこが出ない状態は緊急を要するため、すぐに動物病院を受診してください。
上記の2例に比べると数は少ないですが、尿路の腫瘍によって血尿が発生することもあります。
腫瘍が大きくなることで、正常な組織を圧迫したり傷つけたりして出血するほか、腫瘍自体が壊れて出血する場合もあります。腫瘍は特に、中高齢のネコちゃんに多く見られる病気です。
ネコちゃんの血尿は、腎炎や腎結石、腎腫瘍など腎臓に関する疾患でも起こります。とくに高齢猫の場合、加齢に伴う腎機能の低下が見られ、腎臓にダメージが蓄積されて血尿の症状が現れることがあります。初期は目立った症状がないことも多いため、トイレの様子や尿の色を日頃からよく観察し、異変を感じたら早めに動物病院を受診することが大切です。
慢性腎不全はネコちゃんに多い病気のひとつなので、年齢を重ねたネコちゃんには定期的な健康診断もおすすめです。
血尿は、外からの強い衝撃による外傷でも見られます。例えば、交通事故や高い場所からの転落によって、腹部にダメージを受けると膀胱が傷つき、血尿が出るケースがあります。また、ほかのネコちゃんとのけんかで噛まれたり引っかかれたりして泌尿器系に損傷を受けることもあります。
見た目にケガがなくても、内臓に異常が生じている可能性があるため、血尿が確認された場合はすぐに動物病院で診てもらいましょう。特に屋外では事故や喧嘩による外傷のリスクが高いため、ネコちゃんは室内飼育が推奨されます。
ネコちゃんが特定の薬剤や毒物を摂取した場合、血尿が出ることがあります。特に血液の凝固を妨げる薬剤(抗凝固剤)や、一部の抗生物質では副作用として血尿が現れることが知られています。
また、人間用の薬や観葉植物、殺虫剤など、ネコちゃんにとって有害なものの誤飲も、中毒を起こす原因です。誤飲は非常に危険で、腎臓や膀胱にダメージを受け、血尿のほか、嘔吐や下痢、元気がなくなるといった症状を引き起こすこともあります。家庭内にある薬や洗剤は、戸棚に片付けるなどして、ネコちゃんが誤飲しないよう注意が必要です。少しでも異変を感じたら、すぐに動物病院に相談しましょう。
血小板減少症や血液凝固異常などの血液疾患が原因で、ネコちゃんに血尿が現れることがあります。これらの病気では、体内で出血しやすい状態になっており、その影響で血尿が生じやすくなります。
血尿に加えて、歯茎からの出血や皮膚に点状の出血跡が見られる場合は、全身的な出血傾向が疑われます。血液疾患は進行すると命に関わることもあるため、少しでも異常を感じたら早めに動物病院で血液検査を受けることが大切です。
ここでは、ネコちゃんの年齢や性別によって異なる血尿のリスクについて詳しく解説します。
男の子のネコちゃんは尿道が細くて長いため、尿が詰まりやすく、尿道閉塞を起こすリスクが高いとされています。特に去勢済みのネコちゃんは太りやすくなる傾向があり、尿路結石などの尿石症を発症しやすくなります。
また、ペニス周辺の外傷や炎症が血尿の原因になることもあります。なんらかの違和感からしきりになめて傷をつくってしまうケースのほか、非常に稀なケースとして前立腺が炎症を起こす「前立腺疾患」の可能性も考えられます。血尿の背景にこうした構造的・ホルモン的な要因があるため、男の子のネコちゃんには特に日常的な尿の様子や体調の変化に注意が必要です。
未避妊のネコちゃんの場合、子宮蓄膿症や膣炎といった生殖器のトラブルによって血尿になることがあります。交配後の外傷や、細菌感染による出血も見られるケースがあり、妊娠・出産に伴う合併症で血尿が起こることもあるため、注意が必要です。
一方、避妊済みのネコちゃんは一般的に太りやすくなり、運動不足や水分不足が重なると、尿中のミネラルが結晶化して結石になりやすい傾向があります。膀胱や尿道が傷つき、血尿の原因になることもあるので、気になる場合は動物病院に相談してください。
また、女の子のネコちゃんは尿道が短く、未避妊、避妊済みに関係なく細菌が膀胱に入りやすく、膀胱炎などの感染症にかかりやすい傾向があります。特に排尿時のしぐさや尿の色に異変がある場合は、早めに病院で診てもらうことが重要です。
子猫は、先天的な泌尿器の異常や発育不全が原因で血尿が見られることがあります。体の機能が未熟な時期なので、ほんの小さな異変でも注意が必要です。
一方、シニア猫では腎臓や膀胱の腫瘍、慢性的な腎機能の低下など、加齢にともなう疾患が血尿の原因となることが多くなります。また、年齢を重ねることで複数の病気を同時に抱えるケースも多く、症状が複雑化しがちです。定期的な健康診断と日々の観察による早期発見が、シニア期の血尿対策には欠かせません。
ネコちゃんが血尿をする場合、泌尿器系を中心とした病気が隠れている可能性があります。ネコちゃんに次のような症状も見られる場合は、すでに病状が進んでいる可能性があります。早急に動物病院を受診するようにしてください。
<早急に動物病院を受診したほうがいいケース>
・排尿時に激しく鳴く
・血の塊が多量に混じる
・まったく排尿ができていない
・嘔吐や食欲不振もある
・トイレに行く頻度が高いが、おしっこがほとんど出ていない
・出血量が多い(ほとんど血液に見えるような尿が出る)
受診する際、自宅でおしっこが採れる場合は、できるだけ排尿直後のおしっこを持っていくといいでしょう。また、「血尿がいつから始まったのか」「1日何回トイレに行くのか」「そのうち血尿をしているのは何回か」「排尿姿勢をとってから排尿するまでの様子(時間がかかっていないか、痛がっていないか)」などを確認しておくと、診察の際に役立ちます。
ネコちゃんに血尿が見られた場合でも、尿がうっすらピンク色程度で、食欲や元気があり普段通りに過ごしているなら、まずは1〜2日様子を見ることも可能です。
ただし、この対応ができるのは、排尿の回数や量に大きな変化がなく、排尿時に痛がるような様子が見られない軽度なケースに限られます。症状が悪化したり、血尿が3日以上続いたりする場合は、元気そうに見えても病院での診察を受けることが大切です。
特にネコちゃんは痛みなどの症状を隠すことが多いため、トイレの状況や行動に少しでも違和感がある場合は、早めの受診を心がけましょう。
前述のとおり、ネコちゃんの血尿で動物病院を受診する際は、できるだけ排尿直後のおしっこを持っていくのがおすすめです。ここからは、ご自宅でできる採尿方法をご紹介します。
おしっこを採る方法はいくつかありますが、なるべくネコちゃんに負担をかけず、失敗しにくいやり方を選ぶことがポイントです。
■ネコちゃんのおしっこを採る方法
固まるタイプの猫砂を使用している場合、おしっこが固形になってしまうため採尿は困難です。一方で、システムトイレで固まらないタイプの猫砂を使っている場合は、ペットシーツを敷かずにネコちゃんにおしっこをしてもらうことで、下段のトレーに溜まったおしっこを簡単に採尿できます。
トイレの猫砂の上に、ビニールシートや裏返したペットシーツを敷いておくことで、排尿後上に溜まったおしっこを採ることができます。おしっこに猫砂が付くと正確な検査が難しくなる可能性があるため、ビニールシートなどの位置を調整しましょう。猫砂のない状態で、ビニールシートや裏返したペットシーツにおしっこをしてもらう方法もあります。
ただし、神経質なネコちゃんの場合、トイレの感触に違和感を覚えておしっこをしなかったり、シートを引っ掻いて破いてしまったりするかもしれません。その場合は、無理にこの方法で行うのではなく、ほかの方法も検討しましょう。
ネコちゃんがおしっこをしようとするタイミングで、お玉やトレーを背後からおしりの下に入れて、直接採る方法もあります。差し入れるタイミングが早すぎると、ネコちゃんが排尿をやめてしまう可能性があるため、おしっこを始めてから、驚かせないようにそっと行いましょう。
ペットの採尿専用グッズ使う方法もあります。代表的なのはウロ・キャッチャーというもので、動物病院やネット通販などで購入できます。棒の先端にスポンジがついており、ネコちゃんがおしっこを始めたら、おしりの下にそっと差し入れてください。スポンジ部分をおしっこで十分ぬらすようにすればOKです。
上記で紹介したほかにも、トイレの猫砂の量をできるだけ少なくしておき、トイレの端に溜まった尿を採るという方法もあります。
ネコちゃんのおしっこが採れたら、すぐに密封できる容器(蓋付きの小さな瓶や密閉バッグなど)に入れ、できるだけ早く動物病院へ持って行ってください。時間が経過すると菌が繁殖したり、おしっこが酸化したりして、正しく検査できないことがあります。採ったおしっこで正しい検査ができない場合には、動物病院で改めておしっこを採り、再検査となる場合があります。
自宅での採尿が難しい場合は、動物病院で採ってもらいましょう。おしっこを持っていく代わりに、おしっこ後の猫砂やシートについたおしっこの写真を撮って、獣医師に見てもらうのもおすすめです。
ここからは、ネコちゃんの血尿の主な原因である膀胱炎、尿道炎、尿石症の治療についてく詳しく説明します。実際の治療については、かかりつけの病院の指示に従ってください。
ネコちゃんの血尿の原因として多い膀胱炎や尿道炎は、原因に応じた治療が行われます。細菌感染による膀胱炎の場合は、抗菌剤の投与が基本となります。一方、原因が特定できない特発性膀胱炎では、抗炎症薬や鎮痛薬を使いながら、ストレスを軽減する環境づくりや生活習慣の見直しも重要です。
症状が落ち着くまでの治療期間は1〜2週間程度が目安ですが、改善したように見えても再発することがあるため、定期的な尿検査や通院を続けることが再発予防につながります。
尿石症の治療は、石の種類や症状の重さによって方法が異なります。ストルバイト結石は、専用の療法食によって石を溶かす「食事療法」が効果的です。一方、シュウ酸カルシウム結石は食事での溶解が難しく、外科手術での除去が必要となる場合があります。
尿道閉塞を起こしている場合は緊急性が高く、カテーテルによる排尿処置や場合によっては手術が必要です。尿石症は再発しやすいため、治療後も食事管理や定期的な健康チェックが欠かせません。
ネコちゃんの血尿を引き起こす病気やトラブルを防ぐには、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。ここからは、ネコちゃんの血尿を予防するためにおうちでできることをご紹介します。
ネコちゃんは水を飲む量が少なくなると、おしっこが濃縮しやすく、それによって泌尿器系に良くない影響を与えることがあります。
あまり積極的に水を飲まないネコちゃんの場合は、水飲み場の数を増やす、フードに水分を加える、フードをドライタイプからウェットタイプに切り替えるなどの対策をとりましょう。
キレイ好きなネコちゃんは、トイレが清潔でないと排泄自体を我慢してしまい、その結果、泌尿器系に負担をかけてしまうことがあります。
トイレはこまめにお掃除をして清潔に保ち、多頭飼いの場合はネコちゃんの頭数以上のトイレを用意するようにしましょう。
ネコちゃんのおしっこは、体調をチェックするバロメーターでもあります。普段から、おしっこの回数や頻度、量、色などを観察して、小さな変化にも気づけるようにしておきましょう。
オーナーさんの家族構成の変化や、お部屋の模様替え、ペットホテルに預けられたことなどで、精神的なストレスがかかる場合があります。
できる限り環境の変化を避けつつ、やむをえない場合は、それによってネコちゃんの行動に変化がないか、注意深く観察するようにしましょう。
ネコちゃんに血尿が見られるケースは決して珍しくはありませんが、「よくあること」と放置せず「色が赤っぽい」「普段と違う」と感じたときは異変のサインと考え、すぐに動物病院で診察してもらいましょう。
ネコちゃんの健康維持のため、日頃のトイレ掃除の際に、おしっこをチェックする習慣をつけておくことをおすすめします。
監修者のご紹介
松田 唯さん
埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)を開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬についてわかりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解してオーナーさんが選択できる診療を心掛けるようにしている。
ガイア動物病院
大王製紙の「キミおもい」のネコちゃんシリーズは、ネコちゃんといっしょの暮らしがもっと幸せになることを目指すペット用品ブランドです。
ノーマルトイレ用の固まる猫砂は「紙」と「鉱物」の2タイプから選べます。紙の猫砂はおしっこのpHによって色が変わる黄色い砂と、おしっこの色がわかりやすい白い砂を使用。鉱物の猫砂は白色の砂が混ざっており、砂粒が細かいのが特長です。さらに、システムトイレ用のシートも、白色でおしっこの色がわかりやすいため、毎日の健康チェックに役立ちます。各社システムトイレに使用可能です。
また、トイレ環境を整えるために、お掃除の際には汚れもニオイも除去できる、トイレまわりの掃除用シートをぜひご活用ください。
「キミおもい」のネコちゃんシリーズについては、下記のページをご覧ください。
キミおもい Cat -ネコちゃん-
ネコちゃんの血尿の多くは泌尿器での出血によるもので、膀胱炎や尿道炎、尿石症、尿路腫瘍などが代表的です。男の子では、過剰に陰茎をなめて傷つけることが原因になることもあります。避妊手術をしていない女の子では、生殖器の疾患や炎症が関わる場合があります。
ネコちゃんのおしっこを採る方法として、システムトイレを使用している場合は、下段トレーにペットシーツを敷かずに使うと採尿しやすくなります。ほかにも、猫砂の上にビニールを敷く、排尿時にお玉やトレーで直接受け止める、専用の採尿グッズを利用するなどの方法があります。
ネコちゃんの血尿を予防するためには、できるだけストレスを与えないこと、ネコちゃんが飲む水の量を増やす工夫をすること、そしてトイレを清潔に保つことを心掛けましょう。また、普段から排泄の頻度や量などをよく観察して、ちょっとした変化に気づけるようにしておくことも大切です。
画像提供/PIXTA







