
記事公開:2025.12.24
愛犬がよく吠えて困っている、というオーナーさんは少なくありません。しかし、ワンちゃんが吠えるのはいわばコミュニケーションの手段であり、人にとっては「無駄吠え」であっても、ワンちゃんにとっては大切な感情表現ともいえます。無理に止めさせようとするのではなく、その背景にある気持ちや環境を理解することが大切です。
この記事では、ワンちゃんが吠える主な理由のほか、吠えやすい傾向のある犬種や、原因別に見る具体的な対策を解説します。愛犬がよく吠えて悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
ワンちゃんにとって吠えることは、感情や欲求を伝えるための大切なコミュニケーション手段です。本能的な行動であり、喜び・不安・警戒・興奮など、さまざまな気持ちの現れとして見られます。
特に家庭で暮らすワンちゃんは、言葉を話す代わりに吠えることで自分の意思をオーナーさんに伝えようとします。例えば、「遊びたい」「おなかが空いた」「知らない人が来たよ」といった気持ちを、私たちになんとか伝えようとしているのです。
愛犬がよく吠える場合、ご近所との付き合いもあってその声が気になることもあるかもしれません。「ワンちゃんが吠えることは、意味がある」ということを理解し、頭ごなしに叱るのではなく、まずその背景を読み解く姿勢をもつことが大切です。
吠えること自体を「悪」と捉えるのではなく、どうすれば安心して過ごせるか、どうすれば吠える必要がなくなるかという視点で接することが、問題解決の第一歩となるでしょう。
ワンちゃんが吠えるとき、その行動の背景には必ず何らかの感情や意図があります。しかし、吠え声だけではその真意を判断するのが難しい場合も多いものです。そこで参考になるのが、ワンちゃんの「ボディランゲージ」です。
ワンちゃんは全身を使って感情を表現しています。耳の位置、尻尾の動き、体の姿勢、目の動きなどを見れば、吠えているときにどのような気持ちなのかを読み取るヒントになります。
特に以下のようなサインを見逃さないことで、適切な対応につなげられるでしょう。
■ワンちゃんの主なボディランゲージ
ここでは、ワンちゃんがよく見せる吠え方と、それぞれの背景にある理由、対処方法を解説します。
<ワンちゃんがよく見せる吠え方>
・要求吠え
・興奮吠え
・不安吠え
・警戒吠え
・遠吠え
<要求・自己主張で吠えるときの特徴>
・食欲不振や元気の低下
・オーナーさんをじっと見つめて吠える
・散歩前や食事の時間にソワソワしながら吠える
・前足でオーナーさんに「ちょんちょん」とふれながら鳴く
要求吠えは、「遊んでほしい」「おやつが欲しい」「散歩に行きたい」といった気持ちがあるとき、ワンちゃんは「クンクン」や「ワンワン」といった声でオーナーさんにアピールします。このような要求吠えは、オーナーさんに対する強い信頼や依存の現れでもあります。
要求吠えの対応は、反応せずに無視をすることが基本です。ワンちゃんが「吠えればかまってもらえる」と学習してしまうと、吠えて自己主張しようとしてしまいます。そのため、吠えている最中に反応したり、要求に応じたりすることは逆効果といえるでしょう。
ワンちゃんが落ち着いたらほめたり、かまったりしてあげます。また、「おすわり」「まて」などの代替行動を提示し、自分で冷静になれて指示に従えたらごほうびをあげるのも良い方法です。
<興奮・遊びたくて吠えるときの特徴>
・散歩や来客でテンションが上がって吠える
・遊びの最中に高い声でキャンキャン吠える
・体全体を使ってはしゃぎながら吠える
オーナーさんが散歩に行くためにリードを手に取った瞬間や、友だちのワンちゃんに会ったときなどに「ワンワン!」「キャンキャン」と高く連続的に吠える様子が見られます。このように楽しいことが起きたとき、または期待でワクワクしているときに吠えるのが、興奮吠えです。
この場合、ネガティブな感情ではなく喜びの表現ではあるものの、コントロールできない興奮は問題行動につながるため、冷静さを取り戻すためのトレーニングが必要になります。
ワンちゃんがうれしい気持ちが抑えられずに吠えてしまうパターンでは、先手を打って満足させることがポイントです。例えば来客がわかっている場合は、事前にしっかりと遊び、エネルギーを発散させておくのがおすすめです。
また、短時間で遊びを区切る練習や、コマンドで「伏せ」や「待て」などをトレーニングし、自分で落ち着き、気持ちをコントロールできるようになるとよいでしょう。
<不安・寂しさで吠えるときの特徴>
・オーナーさんの外出直後から吠える
・留守番中に遠吠えしたり、クンクン鳴いたりする
・鳴き声が寂しげで長時間続く
ワンちゃんは、一人で長時間留守番させられると、不安や寂しさから吠えることがあります。ストレスが強くなると、長時間吠え続ける「分離不安」と呼ばれる状態に陥るケースもあります。
このタイプの吠えは、悲しげな声で「クゥーン」と鳴き続けるほか、寂しげな鳴き声が徐々に大きくなるのが特徴です。
分離不安や孤独感による吠えは、精神的なストレスのほか、育て方や、社会化不足、出かける前の声かけの仕方、犬種、遺伝などさまざまな要因が絡んでくることが多く、オーナーさんの愛情やしつけだけでは、なかなか解決しないケースも少なくありません。
オーナーさんがいっしょにいるときはたくさん遊んだりほめたりして愛情たっぷりに接するのはもちろん、散歩や食事は決まった時間に行って安心感を与え、少しずつひとりで過ごすことに慣らしていきましょう。改善しない場合は、動物病院で相談し、サプリメントや薬物療法も検討してください。
<警戒・縄張り意識で吠えるときの特徴>
・インターホンや来客に強く反応する
・外で人やワンちゃんにすれ違うたびに吠える
・窓際で外を見ながら吠える
「ワン!ワン!」と低く力強いトーンの警戒吠えは、相手に対する威嚇や警告の意味です。例えば、インターホンの音や来客、通行人の気配などに対して警戒して吠えるのは、縄張り意識や防衛本能が働いている証拠です。
ただし、ワンちゃんが今の環境に適応できていなかったり、社会化が不足していたりすると、ささいな刺激でも過敏に反応し、強く吠え続けることがあるため注意が必要です。
警戒吠えの対応としては、カーテンで視界を遮ったり、静かな部屋に移動させたりして環境を調整するほか、チャイム音などの刺激に少しずつ慣れさせ、必要以上に周囲を警戒してしまう状況を変えるとよいでしょう。刺激の元を減らし、社会化トレーニングで安心感を育ててください。
ワンちゃんが吠えてもオーナーさんや家族が騒いだり、反応したりしないようにすることも大切です。
<遠吠えで吠えるときの特徴>
・サイレンの音やほかのワンちゃんの遠吠えに反応して吠える
・深夜の静かな時間帯に突然吠える
・繰り返し「ワオーン」と鳴く
ワンちゃん同士の遠吠えや、サイレンなどの音に反応して長く声を伸ばす「遠吠え」は、本能的なコミュニケーション行動です。仲間への呼びかけや所在確認、集団意識の現れともいわれています。
遠吠えはワンちゃんの本能的な行動なので、無理に抑え込むとストレスを感じさせてしまうこともあります。サイレンの音を録音して流すなどのトレーニングをして環境音に慣らすほか、ワンちゃんが吠えてもオーナーさんはそのたびに反応せず、静かに見守ることも大切です。吠える前の兆候を観察し、音が鳴る前に集中をそらすのもよい方法でしょう。
ワンちゃんが吠える傾向には、育った環境やしつけだけでなく、犬種固有の性質も大きく関係しています。以下に、吠えやすいとされる代表的な犬種と、その理由を一覧にまとめました。
| 犬種の分類 | 代表的な犬種 | 吠えやすい理由 |
|---|---|---|
| 狩猟犬をルーツとする犬種 | ダックスフンド、ビーグル、ボーダーコリー、ウェルシュコーギー | 獲物の存在を知らせる役割を担ってきたため、物音や動きに敏感で吠えやすい |
| 牧畜犬をルーツとする犬種 | ボーダーコリー、コーギー | 群れをまとめたり、外敵を追い払ったりする目的で、吠える習性がある |
| 小型犬 | ポメラニアン、チワワ、ヨークシャーテリア | 体が小さく警戒心が強いため、外部の刺激に過敏に反応しやすい |
| 日本犬 | 柴犬、日本スピッツ、秋田犬、甲斐犬 | 縄張り意識が強く、知らない人やほかのワンちゃんへの警戒から吠えやすい傾向がある |
吠えやすい犬種を飼っている場合は、「吠え=問題行動」と捉えるのではなく、個体の特性として受け入れつつ、時間をかけて落ち着いた対応をしていくことが大切です。しつけやトレーニングにも根気が必要になります。
ここからは、ワンちゃんの吠えに対処する際に、特に注意したいポイントを4つ紹介します。
<吠えるワンちゃんへの対応ポイント>
・おやつはポジティブな行動のごほうびとして使う
・大声で叱ると逆効果になる
・家族で対応ルールを統一する
・対応できない場合はプロに頼る
吠えているときにおやつを与えると、「吠えればごほうびがもらえる」と学習してしまうおそれがあります。おやつは「落ち着いているとき」や「指示に従えたとき」のごほうびとして使うのが基本です。
おやつはワンちゃんの気をそらすためではなく、正しい行動に対する報酬として活用しましょう。
吠えるワンちゃんに向かって大声で叱ると、さらに吠えてしまう場合があります。特にワンちゃんが不安や警戒心から吠えている際にオーナーさんまで声を荒げるとワンちゃんのストレスが増し、問題が悪化することも考えられます。
ワンちゃんが吠えることを叱るよりも、「落ち着いた声で短く指示する」「無反応で静かにする」といった対応を心掛けましょう。
家庭内で対応がバラバラだと、ワンちゃんが混乱し、しつけがうまくいきません。「吠えても無視する」「落ち着いたらほめる」など、ルールを家族で共有し、一貫した対応が必要です。
家族それぞれに異なる対応をとると、ワンちゃんは大きな混乱につながります。
よく吠えるワンちゃんについて、オーナーさんの負担が大きいと感じた場合は、無理せずプロに頼りましょう。家庭での対処だけでは改善しない場合、獣医師やドッグトレーナーに相談するのが安心です。
また、ワンちゃんがあまりにもよく吠える場合には認知症やストレス、体調不良が吠えの原因になっていることもあるため、まずは動物病院で健康チェックを受けることもおすすめします。てんかんなど脳の病気が原因となっている場合もあります。
監修者のご紹介
松田 唯さん
埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)を開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬についてわかりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解してオーナーさんが選択できる診療を心掛けるようにしている。
ガイア動物病院
「キミおもい」は、「キミにやさしい、いっしょにうれしい」というブランドの想いから「傾聴飼育」を推奨しています。傾聴飼育とは、ワンちゃんの習性を学び、発するサインを観察し、その意味を理解しながらいっしょに暮らしていくことです。
例えば、ワンちゃんが吠えるときは、甘えたい気持ちや、遊びたい気持ちを示すほかにも、体調不良を伝えている場合もあります。ワンちゃんの状況や行動を見て、判断して対応することが大切です。
「キミおもい」は、オーナーさんの「おもい」とワンちゃんの「おもい」が通じ合えるよう、お手伝いをしています。
「傾聴飼育」の詳しい内容については、下記のページをご覧ください。
キミともっと幸せに 傾聴飼育で、「おもい」が通じ合う暮らしへ
ワンちゃんの毎日のケアに「キミおもい」のワンちゃんシリーズがおすすめです。「キミおもい」のワンちゃんシリーズには、吸収・消臭力のあるペットシーツのほか、シーン別に選べるおむつ、ワンちゃんの肌にやさしいウエットシートなど、愛犬との暮らしがより快適になるアイテムがそろっています。
「キミおもい」のワンちゃんシリーズについては、下記のページをご覧ください。
キミおもい Dog– ワンちゃん-
ワンちゃんが吠える理由はさまざまあり、そのほとんどが気持ちや環境への反応です。警戒、要求、不安、興奮など、吠える行動の背景には必ず意味があります。
オーナーさんは、ワンちゃんがなぜ吠えているのかを見極め、それに合った対応をしてあげてください。犬種の特性や生活環境も吠えやすさに影響するため、愛犬に合った方法で根気よく向き合いましょう。
今日からできる小さな工夫を積み重ねて、愛犬との暮らしをもっと心地よいものにしていってください。
ワンちゃんにとって吠えることは感情や意思を伝える手段です。不安や警戒、喜びなど、さまざまな感情を声で表現しています。オーナーさんは吠えているときのワンちゃんの気持ちを理解し、落ち着いて対応してあげてください。
ワンちゃんが吠える傾向には、育った環境やしつけだけでなく、犬種固有の性質も関係します。例えば、ビーグルなどの狩猟犬や、柴犬やチワワといった警戒心の強い犬種は本能的によく吠える傾向にあります。性格や環境も影響するため、個性を尊重して接してあげてください。
まずはワンちゃんがなぜ吠えるのか、原因を見極めることが大切です。要求のために吠えている場合は反応せずに静かに見守り、不安で吠えている場合は安心感を与えるなど、ワンちゃんが吠えている理由に合った対応をしましょう。一貫した対応を家族で共有し、ワンちゃんが戸惑うことがないようにすることもポイントです。
画像提供/PIXTA














