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大人の夜尿症~原因と対策~

夜尿症は子どもの症状と思われがちですが、大人も悩まされることがある症状です。子どもの夜尿症は、排尿コントロールの未熟さや精神的な不安定さなどが原因になることが多く、成長と共に改善していくことがほとんどです。 一方、大人の夜尿症は思わぬ病気が潜んでいることも多く、看過できない症状といえます。

そこで今回は、大人の夜尿症とその対策方法について詳しく解説します。

夜尿症とは?

夜尿症とは、いわゆる「おねしょ」のことで、睡眠中に尿が漏れてしまう症状を指します。私たちは、生まれながらの排尿コントロールは持ち合わせておらず、成長と共に徐々に排尿コントロールがついていきます。日中の排尿習慣が整い、その後夜間の排尿コントロールができるようになるとオムツを卒業します。その成長過程には個人差がありますが、一般的には2~3歳ほどで昼夜問わず排尿コントロールができるようになります。

しかし、5歳前後までは精神的な緊張や水分の摂りすぎなどの些細な原因で排尿コントロールがうまくいかず、尿漏れを生じることがあります。このため、5歳頃までのおねしょは病的なものと考えることはほとんどありません。しかし、小学校に上がる頃になっても一週間に1回以上おねしょがある場合は「夜尿症」と考えられ、大人でも夜尿症に苦しんでいる方はいらっしゃいます。

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夜尿症の原因

大人の夜尿症は、子どものものとは異なり、排尿に関わる神経ネットワークや膀胱の機能など、さまざまな異常によって引き起こされることがあります。

そもそも排尿はどのようなメカニズムで引き起こされるのでしょうか?
ヒトの体内では腎臓で尿が作られ、膀胱に蓄えられます。膀胱は伸縮性のある筋肉でできており、300~500㏄の尿を蓄えることができます。膀胱では、ある一定以上の尿が溜まって筋肉が伸展すると、末梢神経を介して脊髄に信号が伝えられ、そこからさらに脳へ働きかけて尿意を引き起こします。尿意を感じると、次は脳から脊髄を介して末梢神経に指令が下され、膀胱や尿道、その周辺の筋肉が弛緩・収縮することで排尿が生じるのです。

当然ながら、睡眠中も常に尿は生成されており、膀胱には尿が蓄えられています。しかし、睡眠中は副交感神経の作用で膀胱の筋肉は弛緩した状態になるため、日中よりも1.5倍ほど多くの尿を蓄えることができます。このため、通常であれば睡眠中に尿意を感じることはないのです。

夜尿症は、この排尿コントロールの仕組みが上手く作用しないことによって引き起こされ、その原因には以下のようなものが挙げられます。

加齢

年齢が上がるとともに排尿コントロールに関与していた神経ネットワークの働きが悪化し、思わぬ場面で無意識のうちに尿漏れしてしまうことがあります。
また、膀胱や尿道の筋力も低下するため、尿を抑えることができず、尿意を感じて目覚める前に尿が漏れてしまうこともあります。

ストレス

膀胱の運動を司る自律神経のバランスが、ストレスによって悪化することで尿漏れを生じることがあります。特に、自律神経の1つである交感神経は、膀胱の筋肉を収縮させる作用があるため、気分が高ぶって交感神経が緊張した状態が続くと頻尿に悩まされるだけでなく、膀胱に蓄えられる尿量も減少してしまい、夜尿症を引き起こしやすくなります。

睡眠障害

通常であれば、膀胱に尿が溜まって尿意が生じると睡眠中であっても目が覚めます。睡眠リズムが著しく乱れると、深い睡眠から覚めにくくなることがあり、その時に尿意が生じると目が覚めずに尿漏れしてしまうことがあります。

その他の病気

排尿コントロールをおこなう神経や睡眠障害を引き起こす病気、膀胱を圧迫しやすい病気などによって夜尿症が生じることもあります。

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夜尿症に潜んでいる可能性がある病気

大人の夜尿症は、排尿コントロールが未熟なために生じる夜尿症と異なり、排尿コントロールを司る神経や膀胱などの尿路に影響を与える病気によって引き起こされる場合があります。

夜尿症の原因として多いのは、排尿に関与する神経の病気です。糖尿病による末梢神経障害や腰椎脊柱管狭窄症などの脊髄にダメージを及ぼす病気が挙げられます。これらの病気による夜尿症は尿意を感じにくいのが特徴で、日中でも尿漏れをきたすことがあります。

また、睡眠のリズムが乱れやすい睡眠時無呼吸症候群やうつ病などの気分障害、膀胱や尿管を圧迫して時間を問わず尿失禁を引き起こす前立腺肥大症や便秘、子宮脱(子宮を支えている靱帯や筋肉がゆるむことで、子宮が下がり脱出してしまう病気)なども夜尿症を引き起こすことがあります。

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夜尿症かもと思ったら、何科を受診すべき?

夜尿症を専門的に診る診療科は泌尿器科です。しかし、膀胱などの尿路の器質的な病気でなく糖尿病など別の病気が原因となっている場合には、それぞれの診療科で原因となる病気の治療をおこなう必要があります。

原因となる病気の治療を既におこなっている場合は、かかりつけの病院で相談するのも一つの方法ですが、その他の原因があることも考えられますので、まずは泌尿器科を受診して適切な検査を受けるようにしましょう。

記事監修医:
伊藤メディカルクリニック院長 
伊藤 幹彦 先生