皮膚科学の専門家に学術指導を受けて開発
皮膚科学、化粧品学、光生物学、細胞生物学の幅広い分野を専門とする。
皮膚科学、化粧品学、光生物学、細胞生物学の幅広い分野を専門とする。
おむつかぶれは、マスク荒れと同じ
皮膚表面の湿度と肌の潤いは全く異なる
刺激に敏感な赤ちゃんの肌は、しっかり保湿をして刺激から守ってあげなくてはいけません。おしり部分は、おむつをつけているから湿度もあり、保湿は必要ないと思うのは、大きな間違いです。なぜなら、皮膚表面に湿度があるということと、肌の内部が潤っているということは全く異なることだからです。
保湿は、角層の間に適度な水分を保ち、皮膚の正常な機能を維持します。皮膚の外側は本来乾燥しているものですが、この機能があることで肌が内側から潤い、刺激から守ってくれるのです。しかし、皮膚表面がおむつで湿っていると、皮膚は乾燥していないと判断し、正常に機能しにくくなります。また、空気が通らない密閉状態で過剰に湿度があがると、皮膚上の湿度を好む菌が繁殖し、刺激を与えることになります。
新型コロナウイルスの影響でマスクを着用し続け、 "マスク荒れ"が増えていると話題ですが、マスクの環境もおむつと同じです。皮膚表面の湿度が過剰に上がることで、皮膚が正常に機能しなかったり、菌が増殖しているのです。
乳児の皮膚に対する新たな検証方法を確立
大王製紙さんが、肌への刺激を軽減した紙おむつを開発したということで、乳児の皮膚に対する新たな検証方法を確立するために、乳児の皮膚モデルを用いて、検証を行いました。指標にしたのは、炎症性サイトカインの「IL-1α」と角層のタンパク質「フィラグリン」です。
炎症を引き起こす「IL-1α」は、刺激を受けた肌に多く分泌されます。つまり「IL-1α」の分泌が多いことは、肌荒れが起きていることを意味します。「フィラグリン」は、角層の水分保持に必要な天然保湿因子(NMF)のもととなる物質です。肌の修復機能を担う、「フィラグリン」の発現量が減ることは、バリア機能の低下を意味します。
皮膚モデルに摩擦刺激を与える試験を行った結果、「グリセリン」を配合した表面をなめらかにした不織布モデルは、何も処理していない不織布と比べて、「IL-1α」の分泌量、「フィラグリン」の発現量に明らかな差が見られ、乳児の皮膚に対する新たな検証方法としての有効性が示唆されました。
おむつは、おむつそのものによる刺激、便や尿による刺激と物質刺激の因子が多くあります。私は赤ちゃんの皮膚モデルを用いて試験を行ったのは初めてでしたが、改めて刺激が起きないようなおむつを作ることは重要だと実感しました。