記事公開:2024.11.27
排泄障害の種類について、排尿障害・排便障害における各症状の特徴やその原因、排泄の仕組みについて解説します。
排泄は、人が生きる上で欠かせないものですが、排尿・排便に関する悩みは他人に相談しにくい問題でもあります。そのため、尿モレや失禁、便秘といった排泄障害で困っていても、誰にも言えずに抱え込んでしまう方は少なくありません。
この記事では、排泄障害の種類や症状、原因などについて解説します。
排泄障害とは、排尿障害と排便障害の総称で、尿や便を溜めたり出したりする排泄行為に、何かしらの問題があることをいいます。私たちは、口から摂取したものを体内で消化して栄養と水分を吸収し、代謝や呼吸、血液循環などの活動をすることで、生命を維持しています。
また、そうした生命活動を通して不要となった水分や老廃物を、尿や便として排泄しているのです。
ところが、尿や便をうまく出せなかったり、意図せずに出てしまったり、いつまでも残っている感じがしたりといった症状が表れることがあります。これらは、排泄障害の一種です。
排泄障害は全年代で起こりえますが、特に加齢とともに起こりやすくなる傾向があります。高齢で介護を受ける方に排泄障害がある場合は、本人だけでなく、介護をする方の生活の質をも著しく損ねかねません。
普段、何気なく行っている排泄ですが、その行為はいくつかの意識と動作が組み合わさった複雑なものです。どれかひとつでもうまくできないと、排泄に問題が生じることになります。
排泄の意識と動作は、下記のように行われます。
<排泄時の意識と動作の流れ>
1. 尿意や便意を感じる(意識)
2. トイレまで行き、ドアを開閉する(動作)
3. トイレや便器を認識する(意識)
4. 衣服(下着)をおろす(動作)
5. 便器を整え、上手に便器を使う(動作)
6. 排尿、排便をする(動作)
7. おしりを拭き、トイレの水を流すといった後始末をする(動作)
8. 衣服(下着)を着る(動作)
9. 部屋やベッドに戻る(動作)
排泄障害のひとつである「排尿障害」の症状や原因を紐解くために、まずは排尿がどのようにコントロールされているのかを見ていきましょう。
排尿は、尿を溜める「蓄尿」と、尿を放出する「尿排出」を繰り返して行われます。蓄尿と尿排出をコントロールしているのは交感神経と副交感神経からなる自律神経です。蓄尿時は、緊張しているときに優位になる交感神経が働き、膀胱の出口にある尿道括約筋をギュッと閉じて尿を出さないようにしています。
一方、トイレに行って尿排出の準備が整うと、リラックスしているときに優位になる副交感神経が働いて尿道括約筋をゆるめ、膀胱を収縮させて尿を押し出す仕組みです。
■蓄尿と排出のメカニズム
男性と女性では、排尿の仕組みは同じですが、泌尿器の場所や尿道の長さや形が異なります。
男性の尿道は16~20cmと長く、2ヵ所で折れ曲がったS字のような形です。また、膀胱のすぐ下にある尿道のまわりを前立腺が取り囲んでいます。
女性の尿道はまっすぐで、長さ3~4cmと男性より短いのが特徴です。
■男性と女性の尿路の違い
排尿障害は、尿を溜める「蓄尿」と尿を出す「尿排出」のどちらか、または両方が正しく働かないことで起こります。排尿障害の主な症状としては、下記の3つがあります。
尿失禁は、尿を我慢できない、知らないうちに尿が出てしまうといった状態です。膀胱や尿道括約筋の機能低下によって尿を溜める力が弱まった場合、尿を出しきれずに残った尿が溢れてモレる場合など、さまざまな原因で起こります。また、尿失禁はその原因によって、下記のように分類されています。
・腹圧性尿失禁
咳やくしゃみ、笑ったときなど、おなかに力が入ったときに尿モレする場合は腹圧性尿失禁です。尿道の出口を締める尿道括約筋や骨盤底筋群が衰えるために起こります。女性に多く、加齢や出産によって起こりやすくなるといわれています。
・切迫性尿失禁
強い尿意を感じて我慢できず、モレてしまう場合は切迫性尿失禁です。尿が溜まっていないのに膀胱が勝手に縮んでしまう過活動膀胱や、膀胱炎などによって起こり、頻尿を伴います。
・混合型尿失禁
腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の症状が重なる場合は、混合型尿失禁といわれます。
・溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
尿を出しきれず膀胱に残った尿が、あふれるようにモレてしまう場合は溢流性尿失禁です。男性の前立腺肥大が重症化した場合に起こりやすいほか、糖尿病などの病気も原因となります。
・機能性尿失禁
機能性尿失禁は、排尿に関する判断や動作がうまくできない状態です。認知症などによってトイレがわからない、身体運動機能の低下によって歩けないなどの理由で、トイレに行けず尿失禁をしてしまうケースをいいます。
頻尿は、“トイレが近い”状態です。排尿の回数が日中に8回以上、夜間に1回以上あると頻尿といえます。頻尿は主に蓄尿がうまくできないと起こり、膀胱が過敏になって尿が溜まる前に収縮したり、尿量が増えたりすることが原因です。
また、残尿が多いために新しい尿を溜めるスペースが狭くなってしまい、すぐに膀胱がいっぱいになる場合も頻尿につながります。
頻尿については、下記のページをご覧ください。
排尿回数の正常値はどれくらい?頻尿の原因と対処法を紹介
排尿困難は尿が出にくく、排尿するのに力む必要がある状態です。1回の排尿に50秒以上かかる、途中で排尿が止まってしまうといった症状が表れます。膀胱や尿道括約筋の筋力が低下して上手にゆるめられないこと、尿道がほかの臓器に圧迫されて狭くなってしまうことなどが原因です。
特に多い原因として、男性の前立腺肥大症があります。また、女性の場合は骨盤底筋のゆるみによって膀胱の位置が下がり、尿道を圧迫することが原因となる場合があります。男女共に加齢が影響しているケースが少なくありません。
正常な排便には、便を溜める「蓄便」と、便を出す「便排出」のコントロールが必要です。
蓄便は、結腸の下部から直腸で行われます。小腸を通ってきた便は、結腸で水分を吸収されて徐々に固まっていき、腸の蠕動運動によって、直腸へと送られます。直腸に便が入ると、その刺激が脳へと伝わり、便意を感じる仕組みです。ただし、肛門の筋肉は意識して締めることができるため、大脳から指示があるまで便が出ることはありません。
便排出は、便意を感じた後にトイレに行っていきむことで起こります。少し前かがみになって排便しやすい姿勢でいきむと、肛門がゆるんで、便が直腸から押し出されます。
■蓄便と便排出のメカニズム
排便に問題がなく、正常に行われているかどうかは、排便の回数や量、便の状態などで判断することができます。下記のチェックポイントを確認してみてください。
■正常な排便のチェックポイント
排便障害には、主に「下痢」「便秘」「便失禁」の3つの症状があります。これらの症状は、重ねて起こったり、順番に表れて繰り返したりすることがあります。それぞれの症状は下記のとおりです。
下痢は、便の水分が多くなり、便の形がなくなったり、水っぽい便になったりすることです。正常な便の水分量は70~80%ですが、80%以上になると軟便、100%に近くなると水様便といいます。
下痢は、結腸での水分吸収が妨げられたり、過剰な腸の動きによって便の移動が早すぎたりすることで起こるほか、腸の炎症や腸液の分泌量増加が原因となることもあります。便秘を解消するために便秘薬を飲むと、下痢と便秘を繰り返しやすくなるため注意が必要です。
便秘とは、便が硬く出にくい状態や、何日も便が出ない状態です。毎日便が出たとしても、うさぎの糞のようにコロコロとした便が出る場合は便秘といえます。一方で、数日便が出なくても、便の形が棒状でやわらかく、スムーズに排便できれば便秘ではありません。
高齢者は食事量が減ってしまうため、食物繊維が不足して便秘になりがちです。また、寝て過ごすことが多い方の場合、筋力の低下や、排便に必要な姿勢がとれないことで、いきむ力が足りなくなることも便秘の原因となります。
なお、便意を我慢すると便秘になりやすくなるため、我慢しすぎないことが大切です。
便失禁とは、我慢できずに便がモレてしまうことや、知らないあいだに便が出てしまうことをいいます。下痢や便秘の結果として、便失禁が起こってしまうことも少なくありません。
便失禁は、原因によって主に4つのタイプに分けられます。それぞれの症状は下記のとおりです。
・漏出性便失禁
漏出性便失禁は、知らないうちに便がモレ出てしまう症状です。便を感知する直腸内のセンサーがうまく働かないために起こります。排便習慣を整え、定期的に便をきれいに出しきる習慣を身に付けます。便がやわらかくならないようにすることも大切です。
・切迫性便失禁
切迫性便失禁は、便意を我慢できずトイレに行く前にモレてしまう症状で、肛門括約筋の肛門を締める力が十分でないときに起こります。肛門括約筋を強くするために、骨盤底筋トレーニングを毎日行うことが対処法となります。便をやわらかくしないことも大切です。
・溢流性便失禁
溢流性便失禁は、肛門に詰まった便が溶けて流れ出てくる症状です。少量ずつ、1日中便がモレます。寝て過ごすことが多い方や、便を十分に出しきる力のない方に起こります。一度直腸内にある便をすべて出しきることが大切です。その後は定期的に便をきれいに出しきる習慣を身に付けます。
・機能性便失禁
排便に関係する判断や動作がうまくできない状態で便がモレてしまうことを、機能性便失禁といいます。認知症や身体運動機能の低下によってトイレに行けず、便がモレてしまう状態です。
監修者のご紹介
西村 かおるさん
NPO法人日本コンチネンス協会 名誉会長。東京衛生病院に訪問看護師として勤務後、イギリスで地域看護とコンチネンスケアを学ぶ。帰国後、コンチネンスセンター(排泄ケア情報センター)を開設。現在、コンチネンスジャパン株式会社の専務取締役のほか、北里大学病院(泌尿器科)などでの非常勤勤務などを兼任。全国の病院でコンチネンスのアドバイスなどを実施している。
コンチネンスジャパン株式会社
排泄障害による尿失禁や便失禁は、下着や寝具を汚して不快に感じたり、自尊心が損なわれたりと、日常生活に大きく影響します。そうした悩みには、すぐにトイレに行けないときでも安心な、大人用紙おむつでのケアがおすすめです。
「アテント」シリーズでは、ちょっとした尿モレに対応できる紙パンツから、寝て過ごすことが多い方の介護に使用する紙おむつまで、幅広いラインナップを取りそろえています。ここでは、毎日を快適に過ごすための工夫を凝らした、「アテント」シリーズをご紹介します。
「アテント うす型パンツ 下着気分」は、下着と同じような感覚で使える、うす型の紙パンツです。おなかまわりがやわらかい<やわらかフィット設計>と、おしりまわりの素材に伸縮性を持たせた<すっきりストレッチライン>により、快適なはき心地を実現しています。カラーは「シンプルホワイト」と「エレガントピンクベージュ」の2種類。パッドも併用できます。
「アテント うす型パンツ 下着気分」については、下記のページをご覧ください。
アテント うす型パンツ 下着気分 シンプルホワイト M
アテント うす型パンツ 下着気分 シンプルホワイト L
アテント うす型パンツ 下着気分 エレガントピンクベージュ M
アテント うす型パンツ 下着気分 エレガントピンクベージュ L
「アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス」は、おしっこ約5回分※の吸収量で長時間でも安心なパンツタイプの大人用紙おむつです。<背モレ防止ポケット>で、就寝時・仰向け寝でも背中からのモレを軽減します。リハビリやデイサービスでの利用にもおすすめです。おなかまわりの糸ゴムと脚まわりの糸ゴムがピンク色の素材になった、女性用もあります。
※ 1回の排尿量150mlとして。大王製紙測定方法による。
「アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス」については、下記のページをご覧ください。
アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス Mサイズ 男女共用
アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス Lサイズ 男女共用
アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス Mサイズ 女性用
アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス Lサイズ 女性用
失敗やトラブルのない排泄は、生活の質を維持するために大切なことです。排泄障害があると、行動が制限されたり、日常生活や趣味を楽しむ気持ちが失われたりしてしまうかもしれません。また、介護を受ける方に排泄障害があると、介護をする方の心身の負担も大きくなります。ご自身やご家族に排泄障害がある場合は、原因となる病気を治療するなど、早めの対策を始めましょう。
そのほか、生活の質を維持するために、万が一の尿失禁や便失禁にも対応できる、大人用紙おむつなどの排泄ケア用品を導入することもおすすめです。
排泄障害とは、尿や便を溜めたり出したりする排泄行為に、何かしらの問題があることをいいます。尿や便をうまく出せない、あるいは意図せず出てしまう、いつまでも残っている感じがするなどの症状がある場合、排泄障害をわずらっている可能性があります。
排泄障害は、大きく排尿障害と排便障害に分けられます。排尿障害の主な症状は「尿失禁」や「頻尿」のほか、尿がうまく出せない、残尿感があるなどの「排尿困難」です。排尿障害の原因はさまざまで、過活動膀胱や神経因性膀胱、男性の前立腺肥大症や女性の骨盤臓器脱、骨盤底筋群の筋力低下などによって起こります。排便障害の主な症状には、「便失禁」や「下痢」、「便秘」があります。
排尿障害の場合は、泌尿器科を受診します。尿失禁や頻尿、排尿困難といった排尿障害の症状は、膀胱・尿道などの泌尿器以外の病気が原因で起こることもあり、その場合は病気ごとの診療科目を受けることになります。それでも、泌尿器に原因があるかないかを突き止めるために、まず泌尿器科を受診するのがおすすめです。
排便障害の場合は、便秘や下痢の症状を診てくれる一般内科・消化器内科などを受診します。肛門の締まりがゆるく便失禁がある場合などは、肛門科の受診も検討してみましょう。
受診する場合は、現状がよくわかるように、排尿した時間や、できれば排尿した量を測って記録した排尿日誌、排便の場合は排便した時間や便の形を記録した排便日誌をつけて受診することをおすすめします。
画像提供/PIXTA