散歩中に吠えるのはなぜ?実は見逃しがちな『直前のサイン』とは

散歩中に吠えるのはなぜ?実は見逃しがちな『直前のサイン』とは

散歩中のワンちゃんと飼い主さんの画像

楽しくお散歩していたはずなのに、よそのワンちゃんや歩いている人に急に吠えてしまう……そんな経験はありませんか?「やめさせたいのに、どうしたらいいのか分からない」と悩んでいる飼い主さんも多いかもしれません。
散歩中にワンちゃんが吠えるのは、なぜなのでしょうか。今回はその背景を、動物行動診療専門の獣医師・和田美帆先生に伺いました。次のお散歩からすぐに実践できる対応策もご紹介します。

目次

散歩中に吠えるのはなぜ?

和田先生によると、ワンちゃんの行動には必ず「動機づけ(理由)」「きっかけ(刺激)」があり、散歩中に吠えるという行動はこの2つが重なって起きています。

動機づけとして最も多いのが、犬や人に対する恐怖心です。特に社会化が十分でない場合、見慣れない相手に強い恐怖や不安を抱きやすくなり、「相手を追い払おう」とする行動の表れとして吠えることがあります。

次に考えられるのが、自宅周囲の環境への警戒心が強く、テリトリーを守ろうとする気質が関係しているケースです。この場合は、自宅から離れたところでの散歩では吠えず、犬や人とフレンドリーに接触できる傾向があります。

一方で、犬や人が好きなのに、挨拶できないことへのフラストレーションが背景にある場合もあります。これは「葛藤性の吠え」と呼ばれ、吠える前に尾を緩やかに振る、キュンキュンと甘えた声を出す、体はリラックスしたまま近づこうとする、などの行動が見られます。

このように、「吠える」という同じ行動でも、背景はさまざまです。だからこそ大切なのは、吠えた場面を「吠えた・吠えない」だけで捉えるのではなく、その子の特性(動機づけ)と、そのとき何が起きたか(きっかけ)をセットで考えること。それが、「吠え」を理解する第一歩になります。

背景を理解しないまま行動だけを止めようとしても、根本的な解決にはなりません。特に恐怖心から吠えている場合に叱ると、さらなる恐怖を与え、かえって吠え行動を助長してしまうこともあります。重要なのは、「なぜ吠えたのか」を考えることです。その子にとっての動機づけ(理由)は何なのかを見極められると、具体的な対応を選ぶことができます。

また、学習能力が高く経験したことが定着しやすい時期は、社会化期(生後1~4か月頃)です。この時期に犬や人を好きにさせておくと、恐怖からくる吠え行動の予防につながる可能性があります。
さらに若年期(生後6か月~1歳頃)は、これまでの経験から自分で考えて行動するようになる時期で、問題行動の芽が出始めるタイミングです。この時期に早めに対策すると、問題行動が定着しにくくなります。

和田先生のワンポイントアドバイス

吠えた瞬間だけを見るのではなく、「吠える前に何が起きたのか」「吠えた後にどんな変化があったのか」を振り返りましょう。きっかけと理由が分かれば、解決のヒントにつながります。

吠える前に出ている『サイン』を見つけよう!

“急に吠える”と感じる飼い主さんが多いかもしれませんが、実は多くの場合、その前に「小さなサイン」が表れています。吠えるという行動は、気持ちの高まりが最大の状態なので、そこに至るまでの途中段階があるのです。そのため和田先生が強調するのは、「前兆をよく見ること」です。

たとえば恐怖心から吠えている場合は、下記のような前兆があります。

  • 向かってくる対象をじっと見つめる
  • 犬や人がいる方に耳を向ける
  • 体が硬直する
  • 片方の前足を少し上げて動きを止める

こうした動きは、警戒心が高まっているサインです。

また、しっぽも重要な手がかりです。「振っている=嬉しい」とは限りません。尾の付け根まで力が入り、全身がこわばっている場合は、興奮して身構えをしている可能性があります。しっぽの動きだけを見るのではなく、耳や目線、体のこわばりなども一緒に確認してみましょう。

【恐怖心から吠えている場合のワンちゃんの様子】気になる対象をじっと見つめる、犬や人がいる方に耳を向ける、片方の前足を少し上げる、尾の付け根に力が入る

和田先生のワンポイントアドバイス

ワンちゃんの行動の前後をよく観察してみましょう。特に大切なのは、「吠える直前にどんなサインが出ているか」を見極めることです。その子ならではの反応パターンが分かるようになれば、先回りして対応することができます。

サインの意味を考えて、落ち着いて対応しよう!

サインに気づいたら、次に大切なのは飼い主さんの接し方です。特に恐怖心からくる吠え行動である場合は、対象にはなるべく近づかず、いったん距離をとって離れましょう。離れるスペースがない場合は、「オスワリ」をするよう誘導してください。「オスワリ」や「フセ」はその行動を取ることで、心理学的に落ち着きやすくなると言われています。

ここで重要なのは、「ダメ」と叱るなどして、吠える行動を直そうとしないことです。吠える行動を止めようとするだけでは、ワンちゃんにとっては「何をすればよいのか分からない」不安な状態になってしまいます。代わりに「してほしい行動」を具体的に指示してあげましょう。たとえば「行くよ」と声をかけて対象から離れる、「ついて」や「横に」などと指示して飼い主さんの真横で座らせ、対象が通り過ぎるのを待つ、などです。

それができたらしっかりと褒めてあげましょう。これを繰り返すことで、「こうすれば安心できる」「褒めてもらえる」という成功体験が積み重なり、散歩中も落ち着いていられるようになります。

おすすめの対処法①:好物で気をそらす

おすすめの対処法①:好物で気をそらす

好物で誘導し、刺激となる対象に背を向けるようにして座らせます。落ち着いていられるなら、その状態で対象が通り過ぎるのを待ちましょう。
※飼い主さんとワンちゃんが向かい合う状態だと対象を見続けてしまうため、背を向けるようにすることがポイントです。

おすすめの対処法②:抱えて背を向ける

おすすめの対処法②:抱えて背を向ける

好物に反応しないほど興奮しているときは、小型犬であれば小脇に抱えて首を軽く支え、振り返れないようにして対象に背を向けます。そのまま待つか、わき道にそれて距離を取りましょう。

このような対処法を、サインが見られた段階で行うと、吠えずに済んだり、吠えを早めに終わらせる可能性が高くなります。

また、ワンちゃんは飼い主さんの反応に影響を受けやすい傾向があります。飼い主さんが慌てたり、大きな声で注意をしたりすると、その緊張や高ぶりがワンちゃんに伝わり、かえって興奮が増してしまうことがあります。これは、「社会的促進」と呼ばれる犬ならではの特性のひとつです。
ですから、飼い主さんは落ち着いた態度で対応し、「ダメ」や「行くよ」、「オスワリ」なども落ち着いた声のトーンを心がけ、ワンちゃんの興奮を鎮めてあげましょう。

和田先生のワンポイントアドバイス

ダメ!と叱って「行動をやめさせる」のではなく、「してほしい行動」を具体的に教えてあげるのが大切。望ましい行動ができたらしっかり褒めてあげてください。そのほうがワンちゃんに伝わりやすく、定着しやすい学習方法です。

散歩中に吠える行動は、実はその子なりの「理由」と「きっかけ」が重なった結果として表れています。そしてその直前には、必ずといってよいほど、小さな変化やサインが表れているものです。

次のお散歩ではぜひ、吠える前の視線や耳の向き、体のこわばりに目を向けてみてください。観察を重ねるうちに、「うちの子はこの場面でこうなりやすい」というパターンが見えてくるでしょう。それが分かれば、吠えるほど気持ちが高まる前に、対応することができるようになります。

吠えるのをただ止めようとするのではなく、その背景を理解し、先回りして望ましい行動へ導いてあげること。それが、落ち着いて散歩ができるようになる第一歩です。

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