和田先生によると、ネコちゃんは本来、単独で行動し自分のテリトリーを守りながら暮らしてきた動物のため、飼い主さんのペースに従わせようとするのではなく、飼い主さん側が「どう関わるか」を調整するスタンスでいることが大切だそうです。そのため、ネコちゃんといい関係で暮らしていくためには、ちょうどいい「近づき方」や「距離感」について、知っておきましょう。
たとえばネコちゃんは、顔の近くに急に手が伸びてきたり、上から素早く抱き上げられたりするなど、動きが速く、逃げ道がない接し方をされるのが苦手です。反対に、ゆっくりとした動きで近づき、無理に拘束しない状態で接してあげると、不安を感じることが少なくなります。ネコちゃんが安心して過ごすためには「離れたいときは離れられる」「近づきたいときは近づける」という距離感が大切なのです。
甘えたり離れたり、気まぐれ行動はなぜ?ネコちゃんの『やめてのサイン』を知って、もっといい関係に!
更新日:2026/7/31
自分から近づいてきたのに、構おうとするとふいに離れていく。さっきまで気持ちよさそうに撫でられていたのに、急に怒ったようにいなくなる…。ネコちゃんと暮らしていると、そんな「気まぐれ」に見える場面があるものです。でも実は、その行動を取る前に、ネコちゃんは「これ以上はやめてほしい」という小さなサインを出していることをご存じですか?
今回は、動物行動診療専門の獣医師・和田美帆先生に、ネコちゃんのサインを読み取るヒントを伺いました。
和田 美帆 先生(獣医師)
千葉動物総合病院 動物行動診療科 医長
獣医行動診療科認定医として、ネコちゃん・ワンちゃんの行動を「問題」として捉えるのではなく、その子の本能や気持ちに目を向け、人と動物の双方が心地よく暮らせる関係性と環境作りを目指して診療にあたっている。
目次
ネコちゃんは「近づき方」と「距離感」が大事!
和田先生のワンポイントアドバイス
ネコちゃんとの生活では、「騒がない」「追いかけない」「ネコちゃんがいつでも自由になれる状態にする」ことを心がけるとよいでしょう。
見逃さないでほしい『やめてのサイン』
さっきまで甘えていたのに、すっと離れていく。撫でていたら急に怒る。そんなネコちゃんの行動を、「気まぐれで分かりにくい」と感じたことがある飼い主さんも多いのではないでしょうか。ネコちゃんは、ワンちゃんのように豊富なボディーランゲージで気持ちを伝える動物ではありません。そのため、飼い主さんがネコちゃんの気持ちを読み取るのは、簡単ではありません。
ただし、ネコちゃんは何も伝えていないわけではありません。特に、恐怖や不安、緊張を感じているときには、表情や姿勢、行動に「サイン」が表れることがあります。例をご紹介します。
このような様子が見られたら、飼い主さんはいったん構うのをやめてあげましょう。それでも触り続けたり、距離を縮めようとしたりすると、ネコちゃんは「逃げ場がない」と感じてしまうことがあります。その結果、シャーと威嚇したり、噛みついたり、猫パンチが出たりすることもあります。無理に追いかけたり触り続けたりせず、ネコちゃんが安心できる距離感を大切にしてあげてください。
和田先生のワンポイントアドバイス
ネコちゃんが擦り寄ってきたときは、まず手の甲をネコちゃん側に向け、そっと手を添えるようにしましょう。ニオイをかいだり、さらに擦り寄ってきたりしたら、体を当ててきた部分から優しく撫でると受け入れてもらいやすくなります。
ネコちゃんが休んでいるときに撫でる場合は、飼い主さんが近づいても逃げないことを確認したうえで、顎(あご)の下や頭を指先で短く優しく撫でるのがおすすめです。ネコちゃん同士でも、毛づくろいは頭部に対して行われることが多く、人に触れられる場合も受け入れられやすい部位とされています。
サインはほかにも!ネコちゃんとの接し方を上手に変えてみよう
ネコちゃんが発するサインは、しぐさや行動だけではありません。実は「鳴き声」にも、気持ちを読み取るヒントが隠されています。
猫の「ニャー」という発声は、本来は子猫が母猫に対して行うコミュニケーションのひとつとされています。しかし長い年月をかけて人と暮らすようになる中で、成猫になってからも人に向かって鳴く行動が発達したと考えられています。その過程で、「甘えたい」「要求を伝えたい」「不安を感じている」など、状況に応じて鳴き方のバリエーションも増えていったとされています。
ネコちゃんの鳴き声のサインの例
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「ゴロゴロ」とのどを鳴らす声
→ 安心しているときや、甘えたい・要求を伝えたいときに見られることがあります。ただし、具合が悪いときに出る場合もあります。
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「ミャーオ」と鳴く
→「かまってほしい」「何かしてほしい」など、要求や甘えの気持ちを伝えている場合があります。
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「ガルルル」と低い声でうなる
→ 不満や警戒、恐怖を感じているサインの場合があります。
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「フーッ」という音を出してうなる
→ 強い興奮や怒り、不安を感じていることがあります。
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「カカカ」「ケケケ」と小刻みに鳴く
→ 窓の外に鳥などを見つけたときに出すことがある、特徴的な鳴き声です。
ネコちゃんの鳴き声は、声の高さや強さ、そのときの状況によって意味が変わります。鳴き声だけで判断するのではなく、表情や姿勢もあわせて見てあげましょう。
和田先生のワンポイントアドバイス
ネコちゃんの行動には、そのときどきの気持ちが表れています。「どうしてこうしたのかな?」と理由を考えながら、そのときに発しているサインに合わせて接し方を変えてあげましょう。
ただし、鳴いてすぐに応えてしまうと、「鳴けば要求が通る」と学習してしまうことも。鳴くのが落ち着いたタイミングで対応するようにしましょう。
ネコちゃんの行動は気まぐれに見えることがありますが、実はその前に小さなサインを出している場合があります。そのサインに気づけるようになると、ネコちゃんにとっても飼い主さんにとっても心地よい距離感で接することができます。大切なのは「うちの子は今、どう感じているのかな」と日頃からよく観察し、そのときどきに応じた距離感で接することです。そうした積み重ねが、ネコちゃんとの信頼関係につながっていきます。