アフリカ最大級のスラム街キベラで、日本の小中学校にあたるプライマリースクール「マゴソスクール」を設立、運営をしています。
ケニアの田舎では、生理用品の代わりに泥やニワトリの羽を使っているところもありますが、スラムでは土や羽は手に入りにくいので、古いブランケットや、古くなった布を使っている人がほとんどだと思います。
キベラに住んでいる人のうち、生理用ナプキンを買えない人は7割ほどだとではないでしょうか。
昔の田舎では、生理中の女性は「生理小屋」という専用の小屋ですごさなくてはなりませんでした。
生理は穢れと考えられていたため、食べ物に触ることも許されず、ただじっと生理小屋に敷かれた藁や砂、竹の上に座らせていました。
キベラには生理小屋はありませんが、生理用ナプキンがない女性は生理中には学校にいけない・働きにいけないという状況にあります。
キベラに住む家庭にとって、お金の使い道はまず食べ物です。
物価が年々上がり続けていますから、生理用ナプキンを買うのは容易ではありません。
ですから生理用ナプキンが手に入らず、生理中に学校を休む子は多いです。
私のところに生理用ナプキンがないと助けを求めてくる女子生徒にはわけてあげるようにしていますが、個人でできることには限りがあり、わけてあげられないときもあります。
教師になって15年目になりました。
70%の女子生徒は、生理用ナプキンをはじめとした生理用品を入手できていないと思います。
ここキベラでは、とにかく食べ物を手にいれることが優先されます。
1日の食事が学校の給食だけという子も少なくはありません。
シングルマザーの保護者が多く、親もほんのわずかな稼ぎしかありませんので、生理用品を購入する余裕はないのです。
昔から生理中の女子生徒は5日間、長い子は毎月7日間休んでいるのが普通です。
しかし、家にいることはキベラでは危険を伴います。
親は仕事に出かけてしまっていますので、女子生徒ひとりで留守番という状況になるのですが、そこを男性に襲われてしまうといったことも起こっています。不衛生な古い布の端切れを生理用品として使うことで、病気になってしまう子も多いです。
石けんすら買えないような家庭もありますから、清潔を保つことが難しいのです。
そして、布の端切れを使って登校する子は必ずといっていいほど制服を汚してしまいます。
スカートの汚れを見つけた男子生徒が、その子を取り囲んでからかったり、笑ったりすることも起きています。
そんな目に遭っている子がいたときには、すぐに連れ出して制服を洗ったのちに、私が持っている生理用ナプキンを渡してその日は帰るように話します。
これはよくあることです。たまにあるケースというわけではありません。
ここはスラム街ですから、体や服を洗う水を得るのも困難です。
女の子は家の手伝いとして、20リットルのタンクを持って水汲みにいかねばなりません。
水を汲んだあとは20kgの重りとなった水タンクを持って家に戻ります。
この水も有料ですから、大切に使わなくてはいけないのです。
生理になっても家にいれば笑われない、いじめられない。
だから生理中は不登校になる。そんな子が多いです。
数日休むことになりますから、学校の授業についていけずに成績が落ち込みます。
それが毎月のことですから、女子生徒の負担はかなりのものです。
これまで一度も生理用ナプキンを使ったことのない子もいますので、使い方の指導から始める必要があります。
そして、女子生徒だけでなく保護者にも、正しい月経の知識を得てもらうよう活動すべきだと考えています。
マゴソでは保護者にも学校に来てもらい、このプロジェクトについての説明・月経教育をするようにします。
これまで古い布の端切れを使っていた生徒は、授業中も漏れや臭いを気にしたり、休み時間のたびにトイレに行ったりと集中しにくい状況でした。
生理用ナプキンを使えるようになれば、勉強に集中できるようになりますし、不登校もなくなりますから成績がアップすることでしょう。
活発に動けるようになりますから、このプロジェクトは女子生徒たちをいきいきとさせてくれるはずです。
教師になって19年目、この学校の校長です。
キベラに住む女の子が抱える問題は、大きく3つあると思います。
1つ目が、DV。女の子は家庭不和のしわ寄せを受けやすい傾向にあります。
2つ目が、家事。「女の子は家の手伝いをしなくてはならない」そのような価値観が強いです。
シングルマザーの家庭が多いので、母親が仕事に出ているときは娘がずっとほかの兄弟の面倒を見なくてはいけませんし、家事も娘がすべてやらざるを得ないという状況です。
母親は大抵、早朝から夜までずっと働いていますので、家に残された娘は自分のことより家のことをやらなくてはいけません。
3つ目の問題は、生理用ナプキンを手に入れられないことです。
貧困家庭の子は、生活に必要なものであっても手にいれることはできません。
食べ物すら買えないような家庭では、生理用ナプキンを購入することは難しいでしょう。
キベラで最安の生理用ナプキンは50シリング(約50円)ですが、50シリングあれば質素ながらも食事ができます。
30シリング(約30円)で野菜を買い、20シリング(約20円)で油を買うことができる街ですから。
生理用ナプキンがないために、女の子は自信をなくす体験をしてしまいます。
生理は本来まわりに知られたくはないものです。
しかし、生理用ナプキンがなければ、かなりの確率でまわりに知られてしまうことになります。
すごく恥ずかしい思いをする女子生徒もたくさん見てきました。
今日も制服を汚してしまって傷ついた子がいました。
私たちの学校では女子生徒3名をアンバサダーとして、生理で悩んでいる子の相談にのってもらっています。
校長室には生理用ナプキンを常備していて緊急時には渡しているのですが、私個人のお金で購入していますので全員分となると負担が大きく実現は難しいです。
生理用ナプキンの支援が受けられれば、生理であることに引け目を感じずにコミュニケーションできるようになれますし、いろんな活動に積極的になれるはずです。走ったり、飛び跳ねたりといった、いつもの元気さ・彼女たち本来の明るさをキープできるようになると思います。女子生徒だけでなく、その家族にとっても大きな助けになります。
ケニア政府も生理用品が買えない女性が抱える問題については認識をしていて、対策をしなくてはと動いてくれています。ただ、キベラには200万人もの住民がいますから、この問題が解決する日はまだ遠いかもしれません。