すぐに役立つ介護の情報介護と上手に付き合うために

認知症の方の介護

何らかの原因で、脳の組織が障害を受けたときに起る「持続的な知能低下を」を一般的に「認知症」といいます。
かつては「痴呆」「ボケ」という言葉が使われておりましたが、症状の実態を正確に表していないことから、現在は「認知症」と呼ばれるようになりました。(なお医学的には今でも「痴呆」という言葉が使われています。)
「お年寄りに認知症の症状が出ている」とは、一度獲得した知能機能(記憶、認識、推理、判断、学習など)の低下により、自分や周囲の状況に適切な対応がとれなくなり、自立した生活が困難になっているお年寄りの状態をいいます。85歳以上では19.3%の方にこの症状が見られます。

介護の三原則

認知症の症状・程度を正しく理解すること
認知症を知らずして介護はうまくできません。お年寄りの認知症がどの程度なのか知ることが介護の第一歩です。たとえば、どの程度もの忘れをするか理解した上で話しかけたり、覚えておいてほしいことは何度も話すようにしたり、紙に書いたりしておきましょう。
また、認知症の症状が出ている部分と、出ていない部分が混在していることが普通です。衰えていない部分に目を向けて介護することでお年寄りは安心するものです。
できることに合わせること
認知症のお年寄りは好きでもの忘れしているわけではありません。覚えようにもすぐ忘れてしまうのです。字も忘れ、新聞も読むのがイヤになります。もの忘れしても、簡単な家事でできることがあればしてもらい、うまくできたときはいっしょに喜んであげましょう。
認知症のお年寄りのこころを傷つけないこと
認知症のお年よりは、知的なこころの働きの衰えはありますが、人間的な感情は残っています。認知症になっても喜んだり、怒ったり、悲しんだりします。好き嫌いもあり、自尊心や羞恥心もあります。認知症になったからと軽蔑した気持ちで接することなく、最後までひとりの人間として接するようにしましょう。

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介護の実際

「お金がなくなった」
まわりのこと、家族のことがよくわからなくなると認知症のお年寄りにとってはお金がとても大切なものになります。「お金がなくなった」といったら「こまりましたね。いっしょに探しましょう」といって見つかったら「見つかってよかったですね」と喜んであげたいものです。頭ごなしに否定しないで、お年寄りの身になって聞いて受け入れてあげましょう。
「食べていない」
食べたことをすぐに忘れ1日に何度も食事を催促するときは、1回の食事量を少なくし、回数を増やしてあげてください。
また、食事は家族といっしょにとり、「ごちそうさまでした」といって終えましょう。食器をすぐに片づけない方がよいかもしれません。
「夜眠らない」
夜、まわりが暗く静かになると、今どこにいるのかわからなく不安になって夜中ウロウロしたり、家族を呼びつづけたりします。昼間はできるだけ起こしておき、夜間はどこにいるかわかる程度に部屋を明るくしておきましょう。
「家に帰る」

「家に帰る」イラスト夕方になると「家に帰る」といい出すことがありますが、頭ごなしに否定しないで、「そうですか、遅いから泊まって、あすにしたら」と、うまくお年寄りの話に合わせた対応をしましょう。

「失禁」
しくじっても、決してしからないでください。好きで失禁しているわけでもありません。時間をきめてトイレにさそってみましょう。夜間は失禁してもムリに起こさず、吸収量の多いおむつをあて、ゆっくり休んでもらった方がいいでしょう。
四六時中失禁するようになると、おむつを使わざるをえませんが、お年寄りの状態に合った、逆戻りが少なく、不快感の少ないおむつを使ってあげましょう。つなぎのねまきを着せて、おむつをとったりしないようにしたり、便をいじらないようにする必要があることもあります。

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認知症の予防

お年寄りの認知症は脳の老化や病気(一次要因)とからだとこころと環境の状態(二次要因)が合わさって生まれるものですから、これらの原因を防ぐことが認知症の予防につながります。

脳卒中を防ごう
一次要因の予防

一次要因のうち、脳の萎縮は原因がよくわかっていないので、予防や治療の方法がありません。日本ではこれによる認知症は少ないといわれています。
日本人に多いのは、脳卒中(脳梗塞・脳出血)による認知症です。脳卒中にならないようにすることが認知症を防ぐことになります。脳卒中の原因として高血圧、高脂血症、糖尿病、動脈硬化、心房細動などがあります。

少なくとも年一回血圧を測り、血圧の高い人は、食塩の制限など食事療法をしましょう。食事療法をしてもなお高い人は、降圧剤による治療を受けなければなりません。

糖尿病や心電図の検査も年に一回は受け、必要な人は、同様に食事療法や薬による治療を受けましょう。脳卒中の予防が認知症を防ぐ第一歩です。

老後をすこやかに
二次要因の予防

「老後をすこやかに」イラスト

  • 健康であること
    病気やけがで日常生活が不自由になると、からだを動かすのがおっくうになり、仕事もできなくなり、寝ている時間が長くなりがちです。気持ちが沈みがちにもなり、頭を使うことも少なくなります。このような環境の変化も認知症につながる可能性があります。
  • 働くこと・役割をもつこと
    年老いても、家庭で家事、育児を助けるなどの役割を持たせてあげるようにしましょう。働くことは、からだを動かし病気の予防になります。このことで頭も使いますし、家族のつながりも持てます。お年寄りにとってもっともさびしいことは、自分がもう必要とされなくなったと、実感することでしょう。できるだけお年寄りから仕事や役割を奪わないようにしましょう。
老いを受け入れることと乗り越えること
老いたくない、老いを防ぎたいとはだれもが望むものです。しかし、老いは避けられません。
自分の老いをみつめ、こころの準備をし、その老いの姿に合った生活を送ることが、認知症を防ぐことにつながります。
好ましい人間関係をもつこと
歳をとって人はいつまでもひとりで生きていくわけにはいきません。だれかの助けを必要とします。そのことをみずから認め家族にわかってもらい、素直に助けを求め、手助けしてくれる好ましい人間関係を老いる前からつくっておくことが認知症の予防にもなります。
老後の生活保障が充実すること
からだやこころの健康は、生活が保障されてこそ可能なことです。好ましい生活を保持することは大切ですが、医療、福祉、就労、年金、住居などの老後の生活保障の充実も間接的に認知症の予防につながります。